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2012/2/15

経済産業情報

フェイズドアレイアンテナを液晶基板で、車載GPSアンテナで期待

この記事の要約

無指向性アンテナの一種であるフェイズドアレイアンテナを小型・低価格化する新たな技術を、ダルムシュタット工科大の研究チームが開発した。液晶基板を位相変換素子に用いるのがポイントで、従来の素子に比べ指向性を高速に可変できるほ […]

無指向性アンテナの一種であるフェイズドアレイアンテナを小型・低価格化する新たな技術を、ダルムシュタット工科大の研究チームが開発した。液晶基板を位相変換素子に用いるのがポイントで、従来の素子に比べ指向性を高速に可変できるほか、厚さを薄くできるため、自動車などの移動体にも搭載できる。また、液晶ディスプレーと同じ方法で製造できるため、価格も大幅に下げられるという。

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フェイズドアレイアンテナは、固定式の板状のアンテナに無数の位相変換素子が配置されているアンテナ。各素子に到達する電波の位相を電力に変換し、その合成波の位相に合わせてアンテナの指向性を制御する。機械的にアンテナを動かす方法に比べて高速に指向性を変化させられるほか、すべて電気的に処理されるため信頼性が高い。また、駆動部分がないためメンテナンスが比較的簡単だ。ただ、航空機や船舶、自動車といった高速移動体でGPSなどの衛星電波を受信する目的で使うには指向性の可変スピードが遅く、精度を上げようとすると価格が極めて高くなる難点がある。

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ダルムシュタット大のオヌール・カラバイ氏(博士課程)を中心とする研究チームはこうした事情を踏まえ、低価格で移動体にも搭載可能なフェイズドアレイアンテナの開発に着手。試行錯誤の末、液晶(LCD)を位相変換素子として使用するアイデアに行きついた。具体的には(1)衛星の方向によってそれぞれの素子が受け取る入力波の位相にずれが出る(2)このずれに合わせて液晶素子にかかる電圧が変化し、出力までの時間が制御される(3)出力波の位相差が解消される――という仕組みだ。試作品は厚さ5ミリで、指向性変化にかかる時間はミリ秒単位だった。

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試作品の製作では独化学大手メルクの真辺篤孝氏の協力を得た。量産化に成功すれば1基当たり製造コストは600ユーロ程度にまで下げられる見通しという。

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