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2012/2/22

総合 - ドイツ経済ニュース

ヴルフ大統領辞任、後任は旧東独の人権活動家ガウク氏

この記事の要約

ドイツのクリスティアン・ヴルフ大統領が17日、辞任した。玉虫色の便宜供与・享受を繰り返していたことがメディア報道で明らかになり国民の支持を急速に喪失。検察当局も捜査の準備に入ったため、職務の遂行が困難になったと判断した。 […]

ドイツのクリスティアン・ヴルフ大統領が17日、辞任した。玉虫色の便宜供与・享受を繰り返していたことがメディア報道で明らかになり国民の支持を急速に喪失。検察当局も捜査の準備に入ったため、職務の遂行が困難になったと判断した。後任には旧東ドイツの人権活動家で、前回の大統領選挙でヴルフ氏に敗れたヨアヒム・ガウク氏が就任する予定だ。

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ハノーバー検察は16日、捜査の開始に必要な大統領の不逮捕特権解除を連邦議会(下院)に申請した。職権を利用して映画プロデューサーのダーフィット・グレーネヴォルト氏に便宜を図った見返りとして、ホテルの宿泊代などを何度も受け取っていた疑いが浮上しているためだ。大統領を対象とする不逮捕特権の解除申請はドイツ史上初めて。

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今回のスキャンダルは知人の事業家から住宅融資を受けていたことが発端となった。大統領はニーダーザクセン州首相当時の2010年、同事業家と取引があるかどうかを州議会で質問されて「ない」と虚偽の回答を行い、この事実が11年12月になって発覚。今年1月にはこの件を取材した『ビルト』紙に対しスクープ直前に掲載を見合わせるよう圧力をかけていたことも発覚し、大統領の威厳は大きく傷ついた。第2公共放送ZDFが今月初旬に実施した市民アンケート調査では、半数以上が辞任を求めていた。

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ホルスト・ケーラー前大統領も中途辞任しており、同国では大統領が2人続けて任期をまっとうできない異例の事態となった。

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大統領辞任を受け、メルケル首相は同日に予定していたイタリア訪問を中止して記者会見を開催。遺憾の意を示すと同時に、次期大統領は野党と共同で擁立する意向を表明した。現与党3党が選出した大統領が2人続けて辞任したことを重くとらえ、国民が納得できる人選を行う姿勢を鮮明に打ち出した格好だ。

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擁立過程で与党の亀裂深まる

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後任選びはまず与党のキリスト教民主同盟(CDU)、キリスト教社会同盟(CSU)、自由民主党(FDP)の3党で候補者を絞り込んだうえで、野党の社会民主党(SPD)、緑の党と協議し与野党統一の候補を擁立する手はずだった。

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ガウク氏はヴルフ大統領の辞任直後から最有力候補の1人と目されており、前回の大統領選で同氏を擁立したSPDは同氏を候補とするよう与党に要求した。

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だが、CDU/CSUは前回選挙で野党が求めたガウク氏の擁立を拒否してヴルフ州首相(当時)を担ぎ出した経緯があるため、今回の選挙でガウク氏を支持することに難色を提示。他の候補者を打ち立てる意向だった。これに対し、同じ与党のFDPはガウク氏の擁立を要求。与党内の方針が固まっていなかったにもかかわらずメディアに対しガウク氏支持を鮮明に打ち出したため、CDU/CSUは同氏支持を余儀なくされた格好だ。

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FDPのこの行為は現政権の成立後に生じていた与党内の亀裂を一段と広げた。メディア報道によると、メルケル首相(CDU)はFDPの首脳に対し連立解消を提起する場面があったという。欧州債務危機など予断を許さない問題を抱える現状下で連立を解消すれば、政権に空白が生じて迅速な危機対応ができなくなるため、連立は維持されるものの、今後の政権運営に支障が出るのは避けれれない見通し。次期連邦議会選挙後の連立交渉にも影を落としそうだ。

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ガウク氏(72歳)は3月18日に第11代大統領に選出される。

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同氏は1940年にロストックで生まれた。年少時に父親がソ連の秘密警察に拉致され数年間、行方不明になった経験を持つ。支配政党・社会主義統一党(SED)の青年組織に加入していなかったため、大学では希望していた新聞学とドイツ文学を専攻できず、神学を専攻。牧師となった後は体制に批判的な活動を行い、当局の監視を受けていた。1989年には市民連合「新フォーラム」を結成し、独裁体制崩壊の立役者の1人となった。統一後は東ドイツの秘密警察文書を管理するシュタージ文書管理庁の初代長官を務めた。

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妻とは1991年から別居しており、現在は20歳年下のジャーナリスト、ダニエラ・シャットさんと内縁関係にある。

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