欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2012/2/22

経済産業情報

自立したシート状の二次元周期網目高分子の合成に成功

この記事の要約

自立した単層シート状の二次元周期網目構造(二次元高分子)を有機合成することに、チューリヒ工科大学(ETH)とスイス連邦材料試験研究所(EMPA)の研究チームが初めて成功した。グラフェンに代表されるような二次元高分子は新た […]

自立した単層シート状の二次元周期網目構造(二次元高分子)を有機合成することに、チューリヒ工科大学(ETH)とスイス連邦材料試験研究所(EMPA)の研究チームが初めて成功した。グラフェンに代表されるような二次元高分子は新たな機能性材料として近年、大きな注目を集めており、今回の開発は高分子材料設計のさらなる発展に貢献しそうだ。

\

ポリマー(高分子)とは、非常に多数のモノマー(単量体)が次々と結合(重合)してできた化合物のこと。結合するモノマー分子当たりの官能基の数によって生成されるポリマー分子の形は異なり、官能基が2つ(両末端官能性)のモノマー分子が重合すれば直線状の長い鎖のポリマーが、3つ以上の官能基をもったモノマー分子が重合すれば分岐型、あるいは網目状のポリマーが得られる。実質的に0次元(点状)とみなせる低分子化合物や、線状(一次元)あるいは三次元的な構造の合成ポリマーはこれまでに広く知られているが、分子形状が二次元シート状の合成ポリマーはあまり知られていない。特に、二次元ポリマー分子の内部構造を規則正しく制御することは極めて困難とされてきた。有機物の熱分解により得られるグラフェンはそのような二次元ポリマーの一例として挙げられるが、合成高分子(有機高分子)で同様の二次元周期網目構造を持つものはこれまで知られていなかった。

\

ETHの坂本純二博士とシュルター教授を中心とする研究グループは、二次元規則的に重合しうるモノマーの設計に着手。三角、四角、六角形が単独で平面充填できることに着目して、そのような分子対称性を有する3(4または6)個の多官能性モノマーを開発した。

\

同グループの先行研究では、二次元ポリマーの合成の場として主に水・空気界面が利用されてきたが、チームは今回、モノマーの層状結晶を利用して実験を行った。具体的にはまず、光反応性のモノマーの結晶に可視光(波長470ナノメートル)を照射して固相重合を行い、結晶の各層内で二次元選択的に重合反応を引き起こした。その後、重合した各層(二次元ポリマー)を有機溶剤を用いて結晶から剥離回収。EMPAの電子顕微鏡で観察したところ、得られた二次元ポリマーが狙い通りの二次元周期網目構造をとっていることが確認できた。

\

このようにして合成された二次元ポリマーは、規則的なサイズの細孔を持つため、分子フィルターとしての応用などが考えられる。また、二次元ポリマーのシートのような形状からは、従来の高分子とは全く異なる新しい物性が期待できる。

\

研究結果は『Nature Chemistry』誌に掲載された。

\