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2012/2/22

ゲシェフトフューラーの豆知識

解雇時の意見聴取、事業所委への説明は事実関係だけでは不十分

この記事の要約

従業員を解雇する際は、事業所委員会(Betriebsrat)に理由を説明してその意見を聴取しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)102条1項に明記された規則で、この手続きなしに解雇を通告することはできない […]

従業員を解雇する際は、事業所委員会(Betriebsrat)に理由を説明してその意見を聴取しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)102条1項に明記された規則で、この手続きなしに解雇を通告することはできない。このルールに関する判決(訴訟番号:2 Sa 305/11)をシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所がこのほど下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは市営プールで1999年から清掃・監視係として働く41歳の女性職員。シングルマザーであり、また障害者の認定を受けている。

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同職員は2009年と2010年、勤務中であったにもかかわらず職場を無断で離れたためそれぞれ警告処分を受けた。また、2011年1月には勤務中に行った私用電話を勤務記録に「私用」と記載しなかったため、警告処分を受けた。

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2011年1月20日以降は病気休業していたが、2月4日18時30から19時にかけて職場に出現。落し物管理用の棚からダイバーリングを取ったうえで衣服にくるみ、持ち去った。

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これを目撃した同僚は雇用主に連絡。雇用主は事業所委員会と障害者社会統合局に解雇の意思を伝えた。事業所委は疑義を表明したものの、障害者社会統合局が同意したため、雇用主は3月28日付の文書で解雇を通告した。

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原告はこれを不当として提訴し、第1審のノイミュンスター労働裁判所で勝訴した。解雇処分は行き過ぎというのが裁判官の判断だった。

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第2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁も原告の訴えを認めた。だが、判決理由は第1審と異なる。同州労裁の裁判官は、雇用主は事業所委に対し原告が行った行為の事実関係しか説明しなかったことを問題視。雇用主は当事者間の相反する利益をどのように比較考量(Interessenabwaegung)して解雇という結論に至ったかについても事業所委に説明することをBetrVG102条で義務づけられているにもかかわらず、そうした説明を一切行わなかったと指摘した。

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原告職員の場合であれば、少なくとも◇勤続年数が10年以上と長いこと◇障害者であること◇シングルマザーであること――についてどう考慮したかを説明しなければならなかったわけである。

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裁判官は最高裁である連邦労働裁判所(BAG)への上告を認めなかった。

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