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2012/2/29

経済産業情報

電流でスキルミオン動かし測定する技術開発

この記事の要約

多数のスピンが渦状に配列した構造体(スキルミオン)が格子状に並んだ「スキルミオン結晶」で、電流によってスキルミオンを動かすとともにその動きも同時に測定できる技術を、ミュンヘン工科大学(TUM)とケルン大学の研究チームが開 […]

多数のスピンが渦状に配列した構造体(スキルミオン)が格子状に並んだ「スキルミオン結晶」で、電流によってスキルミオンを動かすとともにその動きも同時に測定できる技術を、ミュンヘン工科大学(TUM)とケルン大学の研究チームが開発した。同技術はこれまで困難とされたスキルミオンによる情報の“書き換え”と“読み出し”の問題に突破口を開くものとして注目を集めそうだ。

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スキルミオンは、多数の電子のスピンが渦を描くように並ぶことで形成される。電気と磁気との関係に大きな物理的相互作用があることや、非常に少ない電流で動かすことが可能なことがすでに分かっており、高密度・省電力の次世代記録媒体として有望視されている。スキルミオン結晶を持つ物質としては、TUMが3年前に発見したシリコンマンガンのほか、鉄・ゲルマニウム合金、鉄・コバルト・シリコン合金などがあり、理化学研究所(日本)はスキルミオン結晶の創製にも成功している。また、ユーリヒ研究センター、ハンブルク大、キール大の研究チームは、スキルミオンで1ビット分(コンピュータが処理する情報の最小単位)の情報を記録するために、15個の原子で足りることを突きとめている。

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従来の磁気記録媒体では、電流によって磁界を生み出すことで記憶素子の極性を切り替えている。電流によって直接情報を書き込むほうがエネルギーの観点からは効率が高いものの、必要な電流が多く副次的な影響が大きすぎるため、事実上利用できない。これに対し、スキルミオンでは電流が結晶内を流れるときに生じるスピンの流れを利用して極性を反転させる。反転に必要な電流は従来型の10万分の1で済むという。

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ミュンヘン工科大のプフライデラー教授とケルン大のロッシュ教授を中心とする研究チームは、スキルミオン1つにつき磁束が1つしか創生されないこと、物質中のスピン渦が動けば電場が作られる(逆も当てはまる)ことをミュンヘン工科大の研究用原子炉(FRM II)による中性子散乱実験で確認、これらのデータを基にスキルミオンの制御・測定法を編み出した。

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研究の詳細は『Nature Physics』誌に掲載された。

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