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2012/6/13

総合 - ドイツ経済ニュース

VW・ポルシェの経営統合に向け前進、法律の盲点突き早期実現にメド

この記事の要約

自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)と高級車大手ポルシェの経営統合計画が近い将来に実現する見通しが高まってきた。これまでは税法上の理由で2014年まで見合わせざるを得ないとみられていたが、同年以前であっても納税を回避で […]

自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)と高級車大手ポルシェの経営統合計画が近い将来に実現する見通しが高まってきた。これまでは税法上の理由で2014年まで見合わせざるを得ないとみられていたが、同年以前であっても納税を回避できる方策を考案。税務当局に問い合わせ、納税義務が発生しないことのお墨付きを取り付けた。VWは停滞していた商用車連合の前進に向けても先ごろ布石を打っており、世界最大・最強の自動車メーカーになるという目標実現の歯車はかみ合い始めようとしている。

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ポルシェは2005年にVW株を20%弱取得。その後、出資比率を高めていき、2009年1月に約51%を確保し子会社化した。さらに75%超の取得を目指したが、投機が裏目に出て財務が大きく悪化したため、逆にVWグループの傘下に入ることになった。

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VWは当初、ポルシェの持株会社であるPorsche Automobil Holdingを買収して経営統合を実現する計画だった。だが、ポルシェがVW買収を仕掛けた際に虚偽の情報を流し株主に多額の損失を与えた疑いがあり、検察が捜査を実施。独米ではPorsche Automobilを相手取って株主訴訟が起こされていることから、VWはPorsche Automobilの買収は財務リスクが大きいと判断し、ポルシェの事業会社Porsche AGの買収に方針を切り替えた。

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だが、Porsche Automobilが手持ちのPorsche AG株(50.1%)を2014年より前に売却すると、同社には法人税、営業税などの支払い義務が発生する。同売却額は45億ユーロで、課税額は15億ユーロに上るとみられる。

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Porsche Automobilはこの負担を回避するために、売却益45億ユーロに加えて、VWの普通株1株も譲り受ける。これにより、VWとの取引は税法上「売却」でなく「事業再編」と区分されるため、早期に実施しても税負担が発生しない。Porsche Automobilは現在もVW株50.7%を保有し、VWと同じ企業グループに属しているという事情が背景にある。(図を参照)

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VWはPorsche AGを早期に買収することで、コストを大幅に削減できる見通し。現在は傘下企業でないため、共同調達や開発などでコストがかさんでいるという。投資銀行メッツラーの試算によると、シナジー効果は3億ユーロを超える。

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両社が考案した取引手法は組織再編税法(UmwStG)の盲点を突いたもので、ポルシェの地元バーデン・ヴュルテンベルク州のシュミット財務相は、公正な立場で同法の改正を検討する必要があるとの見解を表明した。ただ、UmwStGは組織再編を通した企業競争力の強化促進を狙った法律で、改正は経済的なメリットよりもデメリットの方が大きいとの指摘もある。

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