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2013/4/24

ゲシェフトフューラーの豆知識

雇用契約の解除、文書に不備があっても有効なケースあり

この記事の要約

解雇通知書ないし雇用契約の解除文書に不備がある場合、雇用関係は解除されない。これは民法典623条、126条に記されたルールである。では、雇用関係の解除を被用者が望んだにもかかわらず、長い時間が経ってから書式の不備を理由に […]

解雇通知書ないし雇用契約の解除文書に不備がある場合、雇用関係は解除されない。これは民法典623条、126条に記されたルールである。では、雇用関係の解除を被用者が望んだにもかかわらず、長い時間が経ってから書式の不備を理由に元の職場への復帰を要求することはできるのだろうか。この問題をめぐる係争でヘッセン州労働裁判所が2月に判決(訴訟番号:13 Sa 845/12)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判はドイツに本社のある企業を相手取って元社員が起こしたもの。同社はスイスにある関連会社に欠員が生じたため、原告に関連会社への移籍を提案した。原告はこれを受け入れ、2007年7月1日付で移籍した。被告企業はその際、原告に宛てた文書で、移籍の受け入れに感謝を示すとともに、被告との雇用関係が6月30日付で終了することを伝えていた。

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原告は2011年11月30日付で、関連会社を解雇された。これを受けて、元の職場への復帰を原告企業に要求。その際、原告との間で雇用解除の契約を結んでおらず、雇用関係は継続していると主張した。

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第2審のヘッセン州労働裁判所はまず、原告が関連会社に移籍する際に被告が作成した感謝状は解雇文書にも雇用契約の解除文書にも当らないと指摘した。その一方で、原告が被告と連絡をとらずに4年以上も関連会社で勤務してきた事実も指摘。原告が自ら進んで移籍したのは明らかだと確認した。そのうえで、関連会社を解雇された後で被告との雇用関係が終了していないと主張することは「自分のかつての態度に反する行為(venire contra factum proprium)」で信義義務に反すると指摘。元の職場に復帰することを要求する権利はないと言い渡した。最高裁への上告は認めなかった。

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