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2013/9/18

ゲシェフトフューラーの豆知識

セクハラは必ずしも即時解雇の理由にならず

この記事の要約

セクシャルハラスメントは男女差別に当たるとして、一般平等待遇法(AGG)3条4項で禁じられている。同7条3項で「契約義務違反」とも明記されており、雇用主はそうした行為を行った社員を即時解雇することもできる。これについては […]

セクシャルハラスメントは男女差別に当たるとして、一般平等待遇法(AGG)3条4項で禁じられている。同7条3項で「契約義務違反」とも明記されており、雇用主はそうした行為を行った社員を即時解雇することもできる。これについては2012年2月8日号掲載の本コラムですでに取り上げた。では、セクハラを行った社員は必ず解雇しなければならないのだろうか。この問題に関する係争でバーデン・ヴュルテンベルク州労働裁判所が7月に判決(13 Sa 141/12)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判は国際的に事業展開する機械メーカーから即時解雇を通告された男性社員が起こしたもの。同社員は12年2月7~9日に開催された会議に出席した。そこで7日夜に行われた会食で、子会社の男性社員S.C.にセクハラを働いた。具体的にはS.C.がトイレにおもむいた際に腹部を手で触れ、トイレから戻ってきたときにも後ろから腹部を強く抱きしめた。

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S.C.がこの事実を1カ月後に原告の上司に電子メールで伝えたところ、被告企業は原告に即時解雇を通告した。これに対し原告は、即時解雇に値するほどの行為は行っていないなどとして提訴した。

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1審のハイルブロン労働裁判所は原告勝訴を言い渡し、2審のバーデン・ヴュルテンベルク労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、原告の行為はセクハラに当ると認定したものの、◇セクハラは今回が初めてであること◇セクハラの程度が比較的低いこと――を踏まえると、即時解雇は行き過ぎた処分だと指摘。処分は違反の程度に応じたものでなければならないとする「相当性の原則」に反するとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。

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