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2013/9/25

総合 - ドイツ経済ニュース

下院選でメルケル首相大勝、自民の全議席喪失で連立は組み替えに

この記事の要約

独連邦議会(下院)選挙が22日行われ、即日開票の結果、中道右派の与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が得票率を大幅に伸ばし、第一党としての地位を一段と強化した。メルケル首相の人気が大きな追い風となった格好。ただ […]

独連邦議会(下院)選挙が22日行われ、即日開票の結果、中道右派の与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が得票率を大幅に伸ばし、第一党としての地位を一段と強化した。メルケル首相の人気が大きな追い風となった格好。ただ、これまで連立を組んできた同じ中道右派の自由民主党(FDP)は大敗し議席をすべて喪失したため、CDU/CSUは今後、中道左派との連立を模索する。第二党の社会民主党(SPD)と大連立政権を打ち立てる可能性が最も高い。

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CDUとCSUは合わせて41.5%を獲得し、前回(2009年)の33.8%から7.7ポイント拡大した(下のグラフを参照)。経済と雇用の安定を背景にメルケル首相が高い人気を維持。選挙戦で具体的な政策よりも同首相を前面に押し出したイメージ戦略を徹底したことが奏功した。世論調査機関ヴァーレンが有権者を対象に同日実施した電話アンケート調査では、CDU/CSUの勝因として首相のイメージを挙げる回答が68%に達し、CDU/CSUの政策(同21%)を大きく上回った。

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FDPの得票率は議席獲得に必要な5%を下回る4.8%にとどまった。同党が連邦議会で議席を失ったのは今回が初めて。前回の14.6%からは9.8ポイント急落している。

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FDPとCDU/CSUは政策や思想の面で距離が最も近く、長く最適のパートナーと見なされてきた。だが、09年に成立した両会派の政権(第2次メルケル政権)では、財政難で現実味の薄い大幅減税方針などをFDPがかたくなに押し通そうし、政権運営が停滞。これを受けてFDPの人気は急落し党首も交代したが、新たな党首となったレスラー経済相は求心力に欠けており、有権者の支持を取り戻すことができなかった。レスラー党首とブリューデルレ院内総務は責任を取ると明言しており、党の首脳陣は一新される見通しだ。

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SPDは過去最低となった前回の23.0%から25.7%へと伸ばしたものの、目標とした30%には届かなかった。リーマンショックに端を発する金融経済危機への対策で高い手腕を発揮したシュタインブリュック前財務相を筆頭候補に担ぎ出し政権奪回を目指したが、メルケル首相率いるCDU/CSUの支持層を掘り崩すことができなかった。

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反ユーロ政党、存在感示す

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今回の選挙では既存の小政党が軒並み、得票率を落とした。緑の党は過去最高となった前回の10.7%から8.4%に低下。急進左派の左翼党も11.9%から8.6%に落ち込んだ。緑の党は2010年の世論調査で一時25%の支持率を獲得しSPD(23%)を凌ぐ勢いをみせたが、選挙戦で富裕層の税負担拡大など左派寄りの方針を打ち出したことで、中間層の支持を大きく失った格好だ。左翼党は得票率が低下したものの、FDPが大敗したため第3党に躍進した。

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選挙ではユーロ解体を唱えるAfDが注目を浴びた。結党は今年2月で、選挙の準備期間が短かったにもかかわらず、ギリシャやスペインなどの財政悪化国への支援に不安を抱く有権者の支持を取り付けて4.7%を獲得。議会進出は果たさなかったものの、ユーロ危機が今後、再燃すると支持率が5%を超える可能性もある。同党が選挙に参加していなければ、FDPは議席を獲得できていた。

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11年から12年の州議選で躍進していた海賊党は政党としての輪郭を明確化できず、今回の連邦議会選では得票率が2.2%にとどまった。

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大連立政権の方向

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各党の獲得議席数はCDU/CSUが311、SPDが192、左翼党が76、緑の党が63。過半数ラインは316で、CDU/CSUは5議席下回っている。

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新たな政権はCDU/CSUが中心となって樹立する。連立先候補としてはSPDと緑の党の名が挙がっているものの、緑の党は税制やエネルギー政策でCDU/CSUとの相違が大きいため、SPDが最有力候補となっている。SPDのガブリエル党首は23日の党役員会の後で、政権協議を拒否しない考えを表明した。すでにメルケル首相にその意向を伝え、首相は理解を示したという。

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SPD、左翼党、緑の党の合計議席数は過半数に達しているものの、SPDと緑の党が左翼党との連立を明確に拒否しているため、実現の可能性はほとんどない。

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欧州では今回の選挙結果に対し懸念の声が出ている。フィンランドのアレクサンデル・ストゥッブ欧州相はテレビ番組で「メルケルの力は一段と強くなる。自分の考えを何らかの方法で確実に押し通すようになる」との見方を示した。ギリシャの日刊紙『タネア』に掲載された「倹約命令の女王の勝利」と題する記事は「メルケルはドイツ人にとっては良いが、われわれ南欧諸国の者には災難だ」「欧州はメルケルの国になる」などと失望感をにじませた。

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