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2013/10/2

総合 - ドイツ経済ニュース

「再可エネ助成に市場原理を!」、エネルギー業界が次期政権に提言

この記事の要約

独エネルギー水道産業連合会(BDEW)は9月27日、再生可能エネルギー電力の助成システムの転換策を提言した。固定買い取り価格に基づく現行方式は消費者や企業の助成金負担が重くなり制度の限界に達しているためで、BDEWは競争 […]

独エネルギー水道産業連合会(BDEW)は9月27日、再生可能エネルギー電力の助成システムの転換策を提言した。固定買い取り価格に基づく現行方式は消費者や企業の助成金負担が重くなり制度の限界に達しているためで、BDEWは競争原理を活用した方式に改めるよう次期政権に要求していく。予備発電所(コールドリザーブ)の確保策についても市場原理の導入を求めている。

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現行の助成制度では再可エネ発電で生産された電力を20年間、固定価格で買い取る方式が採用されている。買い取り価格と市場価格の価格差が助成金(Marktpraemieと呼ばれる)に当たり、最終的に電力料金に上乗せされて、消費者や企業などの需要家が負担している。この制度の効果で再可エネ発電は急速に増えているものの、助成額は年々拡大。1キロワット時当たりの助成額は2008、09年の1.2セントから、昨年は3.592セント、今年は5.277セントへと上昇した。来年はさらに高くなることが確実とみられている。

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BDEWはこうした現状を改めるため、市場原理を活用した方式への転換を提言した。転換は2段階で実施。まずは今後設置する再可エネ発電設備の事業者に対し発電した電力を全量、市場で売却することを義務づける。売却価格は従来の買い取り価格を確実に大きく下回るため、その差額はこれまで同様、助成金として給付する。助成金を支給するという点でこれまでの方式と違いがないが、事業者に市場での売却を義務化することで、需給に応じた助成方式への転換につながるとみている。

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中期的には再可エネ電力事業者を対象に、電力売却枠の取得に向けた入札を実施する方式を導入する。落札するのは最も安い価格で応札した事業者で、落札後に電力をエネルギー取引所で売却するとともに、落札によって獲得した助成金も受け取る。

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送電事業者に供給能力の確保を義務化

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電力供給量が天候に大きく左右される再可エネ発電を拡大するためには、補完役としてコールドリザーブの火力発電所を維持することが必要不可欠となっている。だが、再可エネ電力を優先供給しなければならないルールがあるため、火力発電所の稼働時間は減少。採算が悪化している。この結果、電力の安定供給が難しくなっており、ブラックアウト(大規模停電)のリスクが高まっている。

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そうした事態を避けるため、連邦ネットワーク庁は予備発電所の確保に努めている。BDEWのヒルデガルト・ミュラー理事が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に述べたところによると、同庁は今冬向けに計2,540メガワットのコールドリザーブを確保する考えだが、そのうち518メガワットについては手当てができていない。

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BDEWは国が一元的にコールドリザーブを確保する方式を非効率だとして廃止するよう要求。代わりに、国内各地域の送電事業者にそれぞれの地域の需要に対応できることを義務づける方式に転換することを提言した。具体的には、火力発電事業者や再可エネ電力の蓄電事業者から必要な時に一定量の電力を調達する権利を送電事業者が事前に購入するというもので、これによりコールドリザーブを安定的に確保できるようになるとみている。

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コールドリザーブを地域ごとに確保するのは、再可エネ電力は主に発電した地域で消費されているという事情があるため。

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BDEWは現行政策が大きな壁に直面していると指摘。次期政権がキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)の大連立政権になるか、CDU/CSUと緑の党の連立になるかを問わず、制度を速やかかつ抜本的に改めなければならないとしている。

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一方、再可エネ発電業界団体はBDEWの提言を受けて、再可エネ電力の多くは現在すでに、市場で直接、売却されていると指摘。また、BDEWの提言が実施されると、再可エネの普及加速に向けた「エネルギー転換政策」に伴うコストは、BDEWの狙いとは裏腹に上昇すると批判している。

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