退職した社員の写真を自社のホームページに掲載し続けることは基本的に人格権の侵害に当たる――。これについては本コラムですでに取り上げた(2012年3月14日号、2012年8月29日号)。だが、ケースによっては人格権の侵害に当らないこともある。そんな判決をラインラント・ファルツ州労働裁判所が昨年11月に下したので、ここで取り上げてみる(訴訟番号:6 Sa 271/12)。
\裁判は冷凍・冷蔵機器メーカーの元社員が同社を相手取って起こしたもの。同社では2010年11月13日(土)、社員の集合写真を撮影した。雇用主は自社のホームページに掲載する意図を事前に伝えたうえで、社員に参加を要請していた。
\撮影には当時試用期間中だった原告を含む33人が参加。社員は3列に並んだ状態で撮影された。
\原告は11年3月15日付で退社。同年11月4日付の文書を被告企業に送り、ホームページ掲載への同意を取り消したほか、(1)掲載した集合写真を13日までに削除する(2)集合写真を今後一切、公開しない――の2点を要求し、損害賠償を求める裁判を起こした。
\被告はホームページからの写真削除を12年1月26日になって実行した。また、集合写真を今後、公表するかどうかについては判決が出るまで決定を保留する意向を4月26日の審理(1審)で表明した。
\1審のコブレンツ労働裁判所は原告の訴えを棄却し、2審のラインラント・ファルツ州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、集合写真は会社概要を説明する目的で掲載されており、原告を際立たせる形では掲載していないと指摘。被告は原告の人格権を侵害していないとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。
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