欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2014/2/26

総合 - ドイツ経済ニュース

VWがスカニアを完全子会社に、商用車連合の実現に向けTOB

この記事の要約

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は21日、スウェーデンの商用車子会社スカニアに対し株式公開買い付け(TOB)を実施し、完全傘下に収める計画を発表した。VWは自社の商用車部門と独子会社MAN、スカニアの3者による商 […]

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は21日、スウェーデンの商用車子会社スカニアに対し株式公開買い付け(TOB)を実施し、完全傘下に収める計画を発表した。VWは自社の商用車部門と独子会社MAN、スカニアの3者による商用車連合の実現を目指してきたが、スカニア側の抵抗で思うように進まないことから完全買収に踏み切る。ただ、スカニアの労組は懸念を示し、スウェーデンの一部の株主も拒否の意向を明らかにしている。

VWは現在、スカニアの議決権の89.2%、資本の62.6%を保持している(表を参照)。今回打ち出したTOBではスカニア株を1株当たり200クローナ(約22.26ユーロ)で取得する考え。これは過去90日間の加重平均株価をA株で57.0%、B株で53.3%上回る水準で、全株式を取得すると総額67億ユーロに達する(A株の議決権はB株の10倍に上る)。TOBで議決権90%超を確保してスクイーズアウト(少数株主排除)の権利を行使し、スカニアを100%子会社化する意向だ。

完全子会社化により、10~15年後に年6億5,000万ユーロ以上のシナジー効果が生まれるとみている。シナジー効果がフルに引き出されるのに10年以上の時間がかかるのは、商用車では製品ライフサイクルが長いという事情があるためという。

VWは商用車連合の実現に向けてスカニアを2008年に買収、MANも11年に傘下に収めた。同連合に対するスカニアの警戒感が強いことを受け、VW商用車部門のトップにスカニア側の人材(ライフ・エストリング氏)も起用した。だが、同連合構想が一向に実現しないことから、VWはスカニアの完全買収に踏み切るほか、商用車部門のトップを来年2月1日付でアンドレアス・レンシュラー氏(競合ダイムラーの商用車部門担当取締役を今年1月28日付で辞任)に切り替える。

TOB価格は高すぎるとの指摘も

VWの完全買収計画に対してはスカニアの労組からセーデルテリエ本社工場で人員削減が行われるとの懸念が出ている。スカニアは23日の臨時監査役会をVWサイドの役員を除いて開催したうえ、TOB提案受け入れの是非を独立した委員会を設置して検討する方針を決議した。

また、スカニアの大株主であるスウェーデンの保険会社Skandiaは、景気低迷でスカニアの株価が低下している現時点でのTOBには応じられないとして、他の株主にも応じないよう呼びかけた。スウェーデン国営年金ファンドAP4も24日、スカニア株の売却に否定的な見解を表明した。

ただ、スウェーデン系の大株主が保有するスカニア株は議決権ベースで2.14%にとどまるのに対し、浮動株比率は同8.53%に達している。VWが90%超を獲得するのに必要な株式は1%未満と少ない。

VWは今回の買収を手元資金と、最大20億ユーロの優先株発行で賄う考え。手元資金で全額を賄うと格付けが引き下げられる恐れがあるため、増資を実施する。

投資会社International Strategy & Investment (ISI)のアナリストは『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に、「出資比率を89%から100%に引き上げるだけの目的で約70億ユーロを支出するのは」問題だと述べ、TOB価格は高すぎるとの見方を示した。これに対しVWのハンスディーター・ペッチュ財務担当取締役は「提示額は(完全買収の)戦略的な価値を反映している」と反論。株主に理解を求めている。