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2015/1/21

総合 - ドイツ経済ニュース

スイスフラン急騰、中銀の通貨防衛中止で

この記事の要約

スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は15日、スイスフラン高を阻止するために行ってきたユーロ買い政策を中止すると発表した。SNBは同政策の堅持方針を先ごろ強調したばかりで、方針転換は予想外。発表は市場に衝撃をもたらし、フラ […]

スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は15日、スイスフラン高を阻止するために行ってきたユーロ買い政策を中止すると発表した。SNBは同政策の堅持方針を先ごろ強調したばかりで、方針転換は予想外。発表は市場に衝撃をもたらし、フラン相場は急騰した。

SNBはスイス経済の支柱である輸出、観光産業を支えるため、2011年9月にフランの上限を1ユーロ=1.20フランとする「防衛ライン」を設定。ユーロが同水準を割り込んだ場合は無制限にユーロ買い介入を行い、フラン高を食い止めてきた。市中銀行がSNBに預ける要求払い預金にマイナス金利を適用することを明らかにした昨年12月18日時点でも無制限介入方針を堅持していた。

SNBがフランの上限ライン撤回を現地時間10時半に発表すると、為替レートは短時間で1ユーロ=1.20フランから同0.85フランへと急落。下げ幅は史上最高の約30%に達した。その後も1ユーロ程度で推移している。

SNBが上限政策を撤回したのは、同政策の継続に伴うリスクが大きくなりすぎたためだ。

ユーロ買い介入を3年以上にわたって行ったことで、SNBの外貨保有高は約5,000億フランに達した。対GDP比率は7割超と極めて高い水準にある。原油安の影響によるロシアの通貨ルーブルの急落などを背景に、安全資産とされるフランを買う動きは加速しており、上限政策を続ける限り、外貨保有高はさらに増え、同中銀のバランスシートは膨張。保有する外貨の価値が大きく下落すれば、巨額の評価損を計上することになる。SNBに金保有の拡大を義務づけることを求める国民投票が昨年11月に行われたのはこうした事情があるためだ。

欧州中央銀行(EBC)が22日の理事会で量的緩和を決定する可能性が濃厚となっていることもあり、SNBは上限放棄を余儀なくされた格好だ。ECBが量的緩和に踏み切るとユーロ相場の下落が加速するため、1ユーロ=1.20フランの上限ラインを維持すればSNBはユーロ買い拡大せざるを得ず、バランスシートのリスクは一段と高まることになる。

大手銀行UBSのアナリストが『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に述べたところによると、SNBの資産の約半分はユーロが占めており、15日のフラン急騰ではユーロだけで200億ユーロの評価損を計上した。ユーロをめぐっては量的緩和のほか、25日のギリシャ国政選挙も交換レートを低下させる恐れがあることから、SNBはバランスシートリスクの拡大という負のスパイラルを、痛みを伴う15日の決定で断ち切ったとも言える。

一部の独自治体で巨額の為替差損

SNBは今回、市中銀行が中銀に預け入れる預金のマイナス金利幅を22日付で現在の0.25%から0.75%に引き上げることも明らかにした。上限ラインの放棄に伴うフラン高を抑制することが狙いで、最重要政策金利とする3カ月物ロンドン銀行間貸出金利(LIBOR)の誘導目標値も従来のマイナス0.75~同0.25%からマイナス1.25~同0.25%へと引き下げた。これらの政策により急速に進んだフラン高が時間の経過とともにある程度、緩和されることを期待している。

フラン急騰を受けてスイス企業の株価は大きく落ち込んだ。輸出、環境産業が大きな痛手を受けるためで、スイスの主要株価指数SMIは同日8.67%下落。時計大手スウォッチは下げ幅が16.1%に達した。同社のニック・ハイエク社長は「SNBは津波を引き起こした」と述べ、突然の政策転換を批判した。SNBがフランの上限政策を中止するシグナルを市場に向けて事前発信していれば、フラン急騰とそれに伴う混乱を回避できたためだ。

ドイツの株価は上昇している。スイス輸出産業の価格競争力が低下すれば、独競合企業の競争力が高まるためで、ドイツ株価指数(DAX)は連日、過去最高を更新。20日の終値は前日比0.14パーセント増の10,257.13に達した。

一方、ドイツの一部の自治体はSNBの措置の直撃を受けている。ユーロよりも金利が低いフラン建てで融資を受けてきたためで、ルール工業地帯の大都市エッセンではフラン建て債務の総額が4億5,000万ユーロに上る。同債務は昨年末の時点ではユーロ建てで借りた場合に比べ負担が5,030万ユーロ軽減されていたが、今回のフラン高騰による為替差損は9,270万ユーロに達しており、市は財政上の大きな重荷を抱え込むことになった。ドイツの自治体は財政状況が悪く為替予約を活用してこなかったことから、フラン高騰の影響を緩和できず、頭を抱えている。

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