転職前の勤め先で年次有給休暇をすでに取得した被用者が新しい勤め先で同一年中に有給休暇を取得することはできない。これは有給休暇法(BUrlG)6条1項に明記されたルールである。同2項には、雇用主は雇用関係が終了した被用者に対し有給休暇の消化日数、ないし有給休暇を買い取ったかどうかについての証明書を手渡さなければならないと書かれている。
被用者は同一年内に転職した場合、この証明書を新しい雇用主に提出。以前の職場で消化できなかった有給休暇があれば、新しい職場でそれを消化できる。では、この証明書を被用者が新しい雇用主に提出しなかった場合、有給休暇の権利はどう取り扱われるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が12月16日に判決(訴訟番号:9 AZR 295/13)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判はスーパーを解雇された店員が同スーパーを相手取って起こしたもの。同店員は2010年に転職し、同年4月12日から被告スーパーで働き始めたものの、11月22日付で解雇された。これを受けて2010年の有給休暇29日分を消化していないとして、これを買い取ることを被告に要求した。
原告は同年の有給休暇を以前の職場で消化しなかったことを証明する文書を被告に提出していなかった。このため被告は、原告は以前の職場で10年の有給休暇をすべて消化したと主張。原告の要求を拒否したため、裁判となった。
2審のベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所は原告の訴えを退けたものの、最終審のBAGは2審判決を破棄。裁判を同州労裁に差し戻した。BAGの裁判官は判決で、以前の職場で10年の有給休暇を部分的ないし全面的に消化していないことを原告が証明できれば、被告は未消化分を買い取らなければならないと言い渡した。