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ドイツ経済ニュース

欧州議会選で二大政党大敗 緑の党は勢力倍増、社民抜き2位に浮上

欧州連合(EU)の立法機関である欧州議会の選挙が26日、ドイツで行われ、中道右派と中道左派の二大政党であるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)がともに得票率を大きく落とした。SPDは同日のブレーメン州議会選挙でも大敗しており、人気凋落に歯止めがかからない状態だ。EUレベルでは英仏伊の3カ国でEU懐疑派が1位を獲得。欧州政治の安定を長年、担ってきた二大会派の欧州人民党(EPP。CDU/CSUが所属)と社会民主進歩同盟(S&D。SPDが所属)は初めて過半数議席を失っており、EUの政策調整は難しくなる恐れがある。

今回の欧州議会選ではCDU/CSUの得票率が前回(2014年)の35.3%から28.9%へと6.4ポイント低下。SPDは11.5ポイント減の15.8%と2ケタ台の落ち込みを記録した。

他の主要政党は急進左派の左翼党を除いてすべて増加した。国政レベルで政権を担うCDU/CSUとSPDから票が流れ込んだ格好で、環境政党・緑の党は前回の10.7%から約2倍の20.5%へと拡大。全国レベルで行われた選挙で初めて第2党へと躍進した。

移民排斥政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は11.0%で、前回を3.9ポイント上回った。ただ、17年9月の連邦議会(下院)選挙の12.6%を下回っており、勢力拡大は頭打ちとなっている。

リベラル系の自由民主党(FDP)は5.4%で、前回を2.0ポイント上回った。

ドイツには欧州議会の計751議席のうち国別で最大の96議席が割り振られる。各党の獲得議席数はCDU/CSUが29(前回34)、SPDが16(同27)、緑の党が21(11)、AfDが11(7)、左翼党が5(7)、FDPが5(3)となっている。

緑の党は17年の連邦議会選で得票率が8.9%にとどまり、議会内の最小政党となった。それから2年も経たないうちに2位政党へと急成長した背景には大きく分けて3つの要因がある。

一つは18年1月に就任したロベルト・ハーベック、アンナレーナ・ベーアボック両共同党首の求心力が高いことだ。ハーベック党首は主要政治家を対象とした有権者定期アンケート調査で常に上位にランキングしている。

地球温暖化対策の強化を求める青少年の抗議活動「フライデー・フォー・フューチャー」がドイツを含む欧州各地で根強く展開されるなど環境意識が高まっていることも追い風となった。世論調査会社インフラテスト・ディマップがドイツの有権者を対象に実施したアンケートでは、「投票する政党を決定するうえで重要なテーマ」として環境・温暖化防止政策を挙げる人が48%に達し、社会保障政策(同43%)を抑えて1位となった。

緑の党は政党としての個性・輪郭が明確であることも高い求心力につながっている。「環境」「親欧州」「リベラルな難民政策」など党の主要な価値観を支持するとする回答は同党投票者の96%を占めた。「緑の党の価値観は私自身にとっても重要だ」との回答も有権者全体の57%と高い。

一方、SPDについては有権者の62%が「どんな政策を目指しているのかが分からない」と回答した。SPDの看板である社会保障政策の分野でも同党の能力を評価するとの回答は前回選挙の41%から29%へと低下した。

CDU/CSUも「何を目指しているかが分からない」とみる有権者が47%と多い。CDUのアンネッテ・クランプカレンバウアー党首とSPDのアンドレア・ナーレス党首はともに人気が低迷しており、次期連邦議会で首相候補の座を得られない可能性もある。

二大政党に先細り懸念

各党の投票者を年齢・社会階層別でみると、CDU/CSUとSPDが60歳以上、低学歴層で支持率が高いのに対し、緑の党は59歳以下と高学歴層で高い。世論調査機関ヴァーレンの調べによると、同党の得票率は18~29歳で33%、30~44歳で25%に達し、全政党のなかで最も高かった。45~59歳ではCDU/CSU(26%)に次ぐ2位(25%)であるものの、CDU/CSUとの差はほとんどない。59歳以下の有権者に限ると支持率は25%で、CDU/CSU(同22%)を抜いて1位となる。現状が続くと、中長期的にはCDU/CSUも抜いてドイツの第一党となる可能性が十分にある。(グラフ参照)

CDU/CSUとSPDの危機感は大きく、今回の選挙大敗を受けてSPDではナーレス党首(連邦議会院内総務)に対する辞任圧力が一気に上昇。ナーレス党首は27日、院内総務選挙を当初予定の9月から6月4日に前倒しする意向を表明した。同選挙で再選を果たし、党首・院内総務の人事論議を鎮静化させる狙いだ。

CDU/CSUとSPDからなる独政府は石炭火力発電を遅くとも38年までに全廃する方針を決めた。ただ、フライデー・フォー・フューチャーはこれを批判し、30年までの全廃を要求。また、温室効果ガスの排出に例外なく課税し、消費電力に占める再生可能エネルギーの割合を35年までに100%へと高めることを求めている。これほど早急な対策を要求しないまでも、政府の温暖化・環境対策は不十分との認識は若年層を中心に根強い。

CDU/CSUとSPDは産業競争力や雇用の維持を重視する立場から、若年層のこうした要求を看過してきた。両党内からは今回の選挙でこれが裏目に出たとの反省が出ており、政府は今後、環境政策を強化する可能性がある。アンゲラ・メルケル首相(CDU前党首)は米CNNのインタビューで、緑の党が躍進したのは温暖化問題など「現在、人々を突き動かすテーマ」で有権者に強くアピールしたからだと指摘。今回の選挙結果で明らかになった問題に対する「回答を見つける」ことがCDU/CSUの課題になるとの見解を示した。

親EU派の優位は揺るがず

欧州議会で各会派が獲得した議席数(暫定)をみると、EPPは177で、前回の221から44減少。S&Dは191から149へと42落ち込んだ。これを受けて他の会派はおおむね増加。リベラル系の欧州自由民主連盟(ALDE&R)は67から107、環境系の緑の党・欧州自由連盟(Green/EFA)は50から69へと伸ばした。

主要5カ国をみると、ドイツとスペインを除く3カ国でEU懐疑派が1位となった。英国ではEU離脱を掲げて1月に設立されたブレグジット党が保守党と労働党から大量に票を奪い、31.7%の得票率を獲得。イタリアでも右派ポピュリズム政党の「同盟」が34.3%を得て地滑り勝利を収めた。フランスでは極右の国民連合(旧国民戦線)が23.3%に上り、マクロン大統領率いる共和国前進(同22.4%)を僅差で破った。

ただ、EU懐疑派の欧州保守改革連盟(ECR)、自由と直接民主主義の欧州(EFDI)、国家と欧州の自由(ENF)の3党が獲得した議席数は計174で、前回からの増加数は20にとどまった。EU全体でみると、勢力を大幅に伸ばしたとは言えない状況だ。二大会派のEPPとS&Dから流出した票は主に、同じ親EU系の会派が受け皿となった。

EPPとS&Dの議席数は計326と、過半ライン(376)を割り込んだ。これにより、両党の連立を通して法案を可決してきた従来の体制は崩壊。今後はリベラル系や緑の党系の会派と連立しないと安定した議会運営ができない情勢で、政策調整の労力が増える可能性がある。

投票率は前回の42.61%から50.95%へと大きく上昇し、少なくとも過去20年間で最高となった。英国のEU離脱やEU懐疑派の勢力拡大に危機感を持った市民が多数、投票に赴いたことが背景にある。