シャープは11日、現行の通信規格であるLTE(4G)の特許をめぐり自動車大手の独ダイムラーを提訴している裁判でドイツのミュンヘン地方裁判所から勝訴の判決文を受領したと発表した。ダイムラーは通信技術の独特許訴訟でフィンランドのノキアに先ごろ敗訴したばかり。ダイムラーは今回の判決を不服として控訴する意向を表明するとともに、生産と部品供給が停止することはないとの見方を示した。
シャープはダイムラー車に搭載されているLTE技術が同社の特許を侵害しているとして、差止と損害賠償の支払いを求める裁判を起こした。ミュンヘン地裁はこの訴えをともに認める判決を下した。差止はシャープが保証金を支払った場合に仮執行される。ロイター通信が消息筋の情報として報じたところによると、保証金の額は550万ユーロに上るという。
車載通信機器の特許をめぐっては、通信技術の特許を持つ企業と自動車メーカーが争うケースが増えている。自動車メーカーは車載通信技術の特許料を、車両向けに通信ユニットを納入するサプライヤーが支払うべきだと主張。これに対し通信技術の特許を持つ企業は自動車メーカーが支払うことを要求している。ダイムラーは今回の裁判で、「公正、合理的かつ非差別的」な条件でライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(FRAND宣言)にシャープが反していると訴えたが、認められなかった。
自動車の通信端末化やつながる工場(インダストリー4.0)などIoTの普及を背景に通信技術の利用分野は現在、急速に広がっている。このため通信技術の特許をめぐる訴訟は今後、増えると予想されている。