陸上風力発電の設置加速へ、32年までに国土の2%を割当

ドイツ政府は15日の閣議で、陸上風力発電施設の設置を迅速化するための法案を了承した。生物種の保護規定や各州が独自に定める設置規制が風力発電拡大の大きな障害となっている現状を改める狙い。法案は州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)の承認を必要としないことから、与党の賛成多数で連邦議会(下院)で可決され来年1月に施行される見通しだ。

政府は国内の電源に占める再生可能エネルギーの割合を2035年までにほぼ100%とすることを目指している。これを実現するため、国土の2%を陸上風力発電に割り当てる考え。だが、実際の割当比率は0.8%にとどまるうえ、実質的に割り当て可能な割合は0.5%に過ぎない。

背景には国内の各州が厳しい設置基準を設定していることがある。例えばバイエルン州では住宅地との距離を風力タービンの高さの10倍以上に保つことを義務付ける「10H」というルールが施行。テューリンゲン州では森林での風力発電が全面禁止されている。

ドイツ政府は州の設置規制で新設のスピードが鈍いという弊害を除去するため、各州に州土の一定比率を32年までに風力発電向けに指定することを義務付ける意向だ。人口密度が高く土地にゆとりのない都市州(ベルリン、ハンブルク、ブレーメン)では同比率を0.5%と低く設定するものの、それ以外の13州については1.8~2.2%の範囲で義務化する。風力発電に適したニーダーザクセンなど6州は2.2%となる。

用地確保目標の達成が遅延しないようにするため、各州には26年時点の中間目標を設定する。都市州は0.25%で、それ以外の州は1.1~1.8%となっている。

どの土地を用地とするかは各州の決定に委ねる。割当比率目標を達成できた州は10Hのような厳しい設置制限を継続できる。ただ、期限内に達成できない場合はそうした制限を適用することはできなくなる。

生物種の保護が風力発電施設設置の障害となっている問題については、自然保護法を改正して対応する。具体的には、新設予定の風力発電設備に鳥類が衝突するリスクがどの程度あるのかの評価方法を国の自然保護法で定め、全国統一の標準化された評価システムを構築する。同改正法案には衝突リスクの高い鳥の種類が盛り込まれた。シュテフィ・レムケ環境相(緑の党)は高い環境保護水準を保つとともに、危機にさらされた生物種の保護を実現すると述べ、環境保護がおろそかになることはないと強調した。

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