アイルランドに本社を置く独米系工業ガス・プラント大手のリンデは7月28日発表の2022年4-6月期決算で9億9,300万ドルの特別損失を計上した。ロシア子会社の減損処理と連結除外で特損が膨らんだ。
ロシアのウクライナ進攻を受け同社はロシアの新規事業を停止した。既存事業も停止する意向で、7月からは現地売上をバランスシートに計上していない。
同国からの撤退の影響はプラント部門で大きい。同部門は露天然ガス最大手ガスプロムからLNGプラントを受注するなど現地事業を積極的に展開してきた。ロシアでのプロジェクトは簿価ベースで約20億ドルに上る。マット・ホワイト取締役(財務担当)は「これらの設備は現在もわが社の所有物だ。そのうちのいくつかは売却する考えだ」と述べ、特損は帳簿上のもので、実際の影響は小さいとの見方を示した。
4-6月期の純利益は3億6,000万ドルとなり、前年同期を57%割り込んだ。調整済みベースでは11%増の15億6,600万ドルに拡大している。
売上高は12%増えて84億5,700ドルとなった。ガス調達コストの上昇分を顧客に転嫁したことが大きい。
サンジブ・ランバ最高経営責任者(CEO)は記者会見で、ドイツでガス供給不足懸念が強まっていることに言及した。同国売上は全体の5%にとどまるため影響は比較的小さいうえ、その3分の2は重要性の高い医療用ガスとプロセスガスが占めると指摘。ガス配給制が導入されても供給が打ち切られるリスクは極めて小さいとの見方を示した。独政府と集中的に協議しているという。