西南ドイツを拠点とするエネルギー大手EnBWは19日、送電網事業を手がける完全子会社トランスネットBWの合弁化に向け入札手続きを開始すると発表した。再生可能エネルギーをベースとするエネルギー経済の実現に必要な投資資金を確保することが狙い。トランスネットBWの株式を計49.9%譲渡する。政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)に同株の先買い権を認めていることから、半国有化される可能性が高い。
トランスネットBW株49.9%をそれぞれ24.95%に分割して売却する。メディア報道によると、取得にはKfWのほか、米資産運用大手ブラックロック、独保険大手アリアンツ、EnBWの地元バーデン・ヴュルテンベルク州の貯蓄銀行連合が関心を示しているもようだ。
KfWは同入札に参加しない。同社は応札企業がEnBWと取引価格などの条件で合意した場合、同じ条件で優先的に取得することができる。KfWがこの権利を行使しなければ、応札企業が当該株を取得することになる。
EnBWは2021~25年に総額120億ユーロの投資を計画している。そのうち60億ユーロ強を電力・ガス輸送網の拡充に充てる方針。同社は自らの投資負担を軽減するため、配電網の拡充や洋上風力発電事業ですでに協業を活用している。
欧州連合(EU)では競争原理を通して電力価格を引き下げるため、発送電分離が推進され、ドイツの電力会社も多くが分割された。だがその結果、独裁国家中国の企業が送電網会社への出資を企てるなど、安全保障上のリスクが露呈。現在の天然ガス不足問題でもロシア国営ガスプロムに輸送・貯蔵面で依存することの危うさが鮮明になっている。
独政府はこうした認識に基づき、KfWを通してトランスネットBWの株式を取得する考えだ。メディア報道によると、EUの欧州委員会は異議を唱えないもよう。