ドイツ連邦統計局が29日発表した第2四半期(4~6月)の賃金(暫定値)は物価調整後の実質で前年同期を4.4%下回った。減少は3四半期連続。名目賃金は2.9%増えたものの、インフレ率が7.6%に達したことから大幅な実質減となった。
実質賃金はコロナ禍初期の2020年第2四半期にも4.7%減と大きく落ち込んだ。当時は多くの企業が操短を実施したことから減少幅が膨らんだ。操短の対象となった被用者が国から受ける手当は賃金に当たらないため、賃金にカウントされないという事情がある。操短手当の押し上げ効果があったことから購買力の低下幅は実質賃金に比べ小さかった。現在はエネルギーや食料品の高騰を受けてインフレが高水準に達していることから、購買力は大きく下がっている。
インフレ率は6月以降、政府の支援策の効果でやや押し下げられている。これらの措置は8月末で終了するうえ、10月には大幅に膨らんでいる天然ガス輸入会社の調達費を消費者や企業が分担するルールが導入されることから、今秋からはインフレが再び加速する見通し。これに連動して実質賃金の減少幅はさらに拡大する可能性が高い。
労組系の経済・社会科学研究所(WSI)の計算よると、締結済みの労使協定に基づき今年、行われる賃上げの幅は名目ベースで平均2.9%となる。インフレ率を加味した実質ベースでは協定賃金(労使協定の拘束を受けない企業は適用対象外)が3.6%低下する見通しだ。