物価圧力は低下見通し、値上げ計画の企業が5カ月連続で減少

インフレ率が高止まりしている。これまで物価を最も強く押し上げてきたエネルギー価格は上昇率が低下しているものの、他の商品、サービス分野への波及が時間差で進行しているためだ。ただ、値上げの動きはすでにピークに達したとみられることから、エネルギー以外の分野でも物価上昇圧力は今後、弱まる可能性が高い。

ドイツ連邦統計局が1日発表した2月の消費者物価指数(速報値)は前年同月比8.7%増となり、インフレ率は前月と同じ水準で高止まりした。物価を強く押し上げているエネルギー価格の上げ幅は政府支援策の効果で前月の23.1%から19.1%に縮小したものの、食料品とサービスで上昇率が拡大。全体が押し上げられた。

食料品は21.8%となり、前月を1.6ポイント上回った。上昇したコストの転嫁が行われた格好で、物価の構成比率が50%を超えるサービスも0.2ポイント増の4.7%に達した。人口が最も多いノルトライン・ヴェストファーレン州のデータによると、旅行や宿泊、飲食で上げ幅が大きい。暖房費や食材費の上昇のほか、人材難に伴う人件費の拡大が背景にあるもようだ。

3月はインフレ率の鈍化が予想されている。比較対象の2022年3月はウクライナ戦争勃発直後で物価が大きく上がったことから、今年3月はベース効果で上昇の余地が小さくなるためだ。

22年のようなエネルギー価格の急騰が今後、起こる可能性はないとみられることから、23年のインフレ率も22年(6.9%)を下回る見通し。

2月のインフレ率は前月比では0.8%に上った。

欧州連合(EU)基準のインフレ率(速報値)は前年同月比が9.3%、前月比が1.0%だった。

製紙・化学で値下げが値上げを上回る

一方、Ifo経済研究所が1日に発表した2月のドイツ価格計画指数(DI)は29.1ポイントとなり、前月の35.2ポイント(修正値)から低下した。同指数の下落は5カ月連続。製造、サービス、建設、流通の4部門すべてで数値が下がっている。企業の大半がすでにコスト上昇分を多かれ少なかれ顧客に転嫁したほか、ほぼすべての経済分野で需要が低迷していることが背景にある。調査担当者は「インフレ圧力は今後数カ月で弱まるだろう」と述べた。

Ifoは月例の企業景況感調査の一環として向こう3カ月の販売価格見通しを質問している。企業は「値上げする」「据え置く」「値下げする」のどれかを選んで回答。「値上げする」の回答比率から「値下げする」の回答比率を引いた数に季節要因を加味したものが価格計画指数となる。すべての企業が「値上げする」と答えれば同指数は100ポイントとなり、すべての企業が「値下げする」とすればマイナス100ポイントとなる。

価格計画指数が最も低かった業界はこれまでに引き続き製紙で、マイナス49.8ポイントを記録。4カ月連続でマイナスとなった。化学もマイナス3.9ポイントとなり、値下げ回答が値上げ回答を上回った。

製造業ではこのほか、繊維(2.1ポイント)、ゴム・樹脂製品(6.0ポイント)、食品・飼料(6.8ポイント)で数値が低かった。また、飲料は56.1ポイントと水準が高いものの、前月(71.8ポイント)からは大幅に低下した。自動車は38.8ポイント、データ処理装置は37.1ポイント、機械は35.4ポイント、金属製造・加工は21.5ポイントだった。

サービスでは旅行で70.2ポイントから63.2ポイント、飲食で56.6ポイントから52.7ポイントへと下がった。

流通でも全体的に数値が低下傾向にある。ただ、娯楽家電販売では52.5ポイントから72.7ポイントへと大きく上昇した。

建設は18.7ポイントとなり、2021年4月以来の低水準を記録した。需要の減少が反映されている。

1月のインフレ率はエネルギーと食料品を除いたコアベースで5.6%となり、前月の5.2%から上昇した。エネルー価格と川上物価の高騰が最末端の消費者物価に時間差で波及。価格転嫁が幅広い商品分野で行われたためだ。ただ、企業の値上げの動きが5カ月連続で弱まっていることを示すIfoのデータから判断すると、コアのインフレ率が低下へと転じるのは時間の問題とみられる。

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