欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/7/13

EU情報

欧州議会が株主権利指令の改正案を可決、収益や課税額の国別公表義務を追加

この記事の要約

欧州議会は8日の本会議で、大企業や上場企業におけるコーポレート・ガバナンス(企業統治)の向上を目的とする、「株主の権利指令(Shareholders’ Rights Directive)」改正案の修正案を賛成 […]

欧州議会は8日の本会議で、大企業や上場企業におけるコーポレート・ガバナンス(企業統治)の向上を目的とする、「株主の権利指令(Shareholders’ Rights Directive)」改正案の修正案を賛成多数で可決した。株主が適切に権利を行使しやすくし、出資する企業の経営に積極的に関与するよう促すのが狙いで、報酬制度に関する発言権の強化などを柱とする内容。また、企業の課税逃れ防止に向け、収益や課税額などを国別に公表することを義務付けるルールも盛り込まれている。今後、閣僚理事会で修正案について協議する。

金融危機では株主が経営陣による過度の短期的リスクテイクを見逃したことが事態を悪化させる一因になったとの指摘がある。欧州委員会はこうした反省に立ち、昨年4月に株主の権利強化や短期主義の排除に主眼を置いた現行指令の改正案を発表した。これを受けた欧州議会の審議では、企業の税負担に関する透明性を高めるための施策や、株式の長期保有を奨励するための優遇制度などを盛り込んだ修正案が提示された。

本会議で採択された修正案によると、国境を越えて活動する大企業は税引き前損益、課税額、公的補助を受けている場合はその受領額を国別に公表することが義務付けられる。上場企業のほか、社会的影響度の高い事業体(public interest entity)にも同ルールが適用される。

一方、企業は3年ごとに役員報酬に関する方針を策定して株主に賛否を問わなければならない。報酬方針には給与や賞与などの明確な基準や上限を明記するほか、報酬が企業の長期的な業績にどのように貢献するかなどの情報を盛り込む必要がある。欧州議会は当初、報酬方針について株主の承認取得を義務付ける方向で検討していたが、最終的に株主による投票結果に拘束力を持たせるかどうかは加盟国の判断に委ねるとの案が支持された。

改正案にはこのほか◇機関投資家などの株主から手数料を受け取って、株主総会の議案に賛成すべきか反対すべきか助言する議決権行使助言会社(プロクシアドバイザー)を新たに規制の対象とし、助言内容や株主と企業の間で利益相反が生じた場合の対応などについて説明責任を求める◇企業と利害関係者(たとえば経営陣、筆頭株主、グループ企業など)との取引についても透明性を確保するため、総資産の1%を超える取引は詳細情報を開示し、5%を超える取引は株主の承認を得ることを義務づける――などが盛り込まれている。