ガスプロムのミレル社長は13日、「欧州とアジアのエネルギー市場は一体化しつつある」と述べ、ロシア産天然ガスの対アジア供給の広がりで欧州の交渉力が小さくなるとの見方を示した。外交関係が冷え込む欧州連合(EU)に対する政治的けん制とみられる。
ガスプロムは昨年末以来、サウス・ストリームの代替計画としてトルコに向けたパイプライン建設を決めたほか、独BASFとの資産交換取引の中止、独ガス供給大手VGNからの資本撤退を発表するなど、欧州主要地域での事業を急速に縮小している。
EUとはガス会社に生産事業と運送事業の分離を求める欧州法をめぐり、以前から対立していたが、外交関係の悪化で両者の溝は深まるばかりだ。
新たな活路としてガスプロムは中国やトルコに接近しており、ミレル社長は取引先の多様化で欧州向けガス価格が「第4四半期には上がり始める」と予測する。来年に入っても上昇が続く見通しという。
また、トルコへの新パイプラインが開通する2019年以降はウクライナ経由のガス輸送を中止する方針で、EUが欧州内の輸送ルートを整備するなら「すぐに始めないと間に合わない」と警告する。ガスプロムは「要請があれば」南東欧地域における「イーストリング・パイプライン計画」にも参加を検討すると話し、EUとの関係断絶ではなく、新事業への道も残しておきたいようすだ。
業績が急速に悪化していることに加え、関係者によれば昨年5月に結んだ中国とのガス契約が「採算割れ」の内容で、欧州なしには事業が成り立っていかない苦しい事情が見え隠れしている。(東欧経済ニュース2014年9月24日号「ガスプロムに対する調査を一時中止、ウクライナ情勢悪化で」、同2月12日号「ガスプロムの競争法違反問題、欧州委がさらなる改善要求」を参照)