ロシアのガスプロムは6日、ドイツの天然ガス供給大手フェアブントネッツ・ガス(VNG)の株式10.52%を手放すと発表した。提携する独BASF子会社ヴィンタースハルによるVNG株売却で、同社への影響力を失ったためと説明している。売却先候補などの詳細は明らかにされていない。欧州進出への踏み台と位置づけられていたVGNからの撤退で、欧州事業の縮小計画が一段と進展する。
VNGはドイツ東部のガス供給大手。独同業のEWEが63.69%、ドイツ東部の自治体らが25.29%を出資する。ヴィンタースハルが先月、保有していた15.79%をEWEに売却したため、ガスプロムはヴィンタースハルと共同で少数阻止権を行使することができなくなった。
ガスプロムによれば、VNGへのガス供給量は昨年、63億立方メートルだった。これは対ドイツ供給量の約18%に当たる。
VNGは昨年、資産売却による特別収入で1億8,400万ユーロの純益を計上した。しかし、本業であるガス事業の売上高は価格低迷などで10億ユーロ減の100億ユーロに落ち込んだ。
ガスプロムは過去10年間、西欧事業の本格展開に向けて多額の資金を投入してきた。BASFとの資産交換取引で、ドイツのガス取引・貯蔵事業を取得することも予定されていたが、ウクライナ紛争をめぐる欧州との関係悪化を受けて昨年末に取りやめた。長期にわたって計画してきたパイプライン敷設計画「サウス・ストリーム」も中止した。また、今年初めには、エネルギー取引事業GMTをロンドンからサンクトペテルブルクへ移管することも明らかになった。
関係筋は、欧州事業縮小の理由として外交関係悪化のほかに、欧州当局による資産差押さえに対する懸念を挙げる。蘭デンハーグにある常設仲裁裁判所(PCA)が昨夏、石油会社ユコスの解体・国営化を不当として、元ユコス株主の買収請求を認めたことがこの背景にあるようだ。