大抵の職場にはパソコンやプリンターが設置されている。では、プリンターのトナーにアレルギーを持つようになった被用者は労災認定を受けることができるのだろうか。この問題をめぐる係争でミュンスター高等行政裁判所が7月の決定(訴訟番号:3 A 964/15)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判はノルトライン・ヴェストファーレン州の税務署に勤務する公務員が労災認定機関を相手取って起こしたもの。職場のトナーが原因でアレルギーの一種である接触性皮膚炎(CD)を発症したとして労災認定を申請したが、却下されたため提訴した。
1審のミュンスター行政裁判所は訴えを退け、2審のミュンスター高等行政裁も同様の判断を示した。決定理由で同高等行政裁の裁判官は、トナー粉末が原因で原告がCDを発症した可能性は排除できないとしながらも、労災認定を受けるには発病リスクが◇業務の性質上、極めて高い◇他の職業に比べても極めて高い――という2条件を満たしていなければならないと指摘。原告はこの2条件をともに満たしていないと言い渡した。抗告は認めなかった。