ポーランドが、ウクライナ紛争をめぐって関係の悪化するロシア国境を固めにかかっている。全長200キロメートルの国境沿いに監視塔6基を新設するほか、既存の7基についても監視システムを近代化し、最新の水準に引き上げる。欧州連合(EU)もこれを支援しており、1億4,000万ズロチ強(370万ユーロ)の費用のうち75%を助成する――というもっともらしいニュースが流れているが、状況はそれほど緊迫していないようだ。
現地の国境警備官によると、非加盟国との国境警備を強化するEUの計画が、このたび実行に移されただけの話という。新しい監視塔は高さ35~50メートルで、最新鋭の機器でとらえたデータが地元の監視センターに送られる仕組み。6月から稼動する予定だ。元からあった7基の監視塔も年内に改修を終える。
監視目的は、ロシアのスパイ――ではなく、密輸防止というこれまた、ごくごく一般的なものだ。国境付近の住民は互いにビザなしで行き来できる特権を持つが、ポーランド人が「ロシアへ出国するときより、帰国するときのほうが検査が厳しい」と証言するように、たばこなどの密輸に目が光る。
ただ、きな臭い話がないかといえば、そんなこともない。ロシアは先月に大規模な軍事演習を行い、ポーランドとリトアニアと国境を接する飛び地領カリーニングラードに短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を配備した。このミサイルは核弾頭の搭載も可能で、ドイツの首都ベルリンにも到達可能と言われている。
演習の目的は北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大をけん制するためものとみられている。万一、ロシアのミサイルが飛んできた場合、ポーランド側は迎撃できる態勢にない。ある退役将校は、その問題を認めたうえで「起こりうる事態を冷静に分析し、軍の現状でどう対処できるか、シナリオを練らねば」という。
国境固めも、国の防衛も一朝一夕では成らぬ。デジタル化で移り変わりのあわただしい今日でも、長期的視点が必要なことは変わりないようだ。(写真:AP/Süddeutsche Zeitung)