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2016/5/4

総合 - ドイツ経済ニュース

環境対応車の購入者に補助金 政府が方針転換、EVで4000ユーロ

この記事の要約

ドイツ政府は4月27日、電気自動車(EV)など環境対応車の購入者に補助金を支給する方針を明らかにした。これまでは同補助金に否定的な立場をとってきたが、環境対応車の普及が目標を大幅に下回っていることなどを受けて方針を転換し […]

ドイツ政府は4月27日、電気自動車(EV)など環境対応車の購入者に補助金を支給する方針を明らかにした。これまでは同補助金に否定的な立場をとってきたが、環境対応車の普及が目標を大幅に下回っていることなどを受けて方針を転換した。ただ、同助成金に対しては恩恵を受けない業界のほか、与党内からも批判が出ており、議会審議や採決は難航する恐れがある。

メルケル首相やガブリエル経済相(副首相)、ショイブレ財務相などは26日、自動車業界の代表と協議し、環境対応車の普及促進方針で合意した。補助金の支給対象となるのは電力を100%動力源とするEVなどの電気駆動車と、プラグインハイブリッド車(PHV)で、助成額は電気駆動車が4,000ユーロ、PHVが3,000ユーロとなっている。カタログ価格が6万ユーロ超の車両は助成対象とならない。

同補助金の総額は12億ユーロで、国(連邦)と自動車業界が折半。自動車メーカーではフォルクスワーゲン(VW)、ダイムラー、BMWの3社がすでに拠出を確約している。補助金を拠出しないメーカーの車両は助成対象とならないため、3社以外のメーカーも加わると予想される。

助成は5月中旬にも始まり、最長で2019年末まで行われる予定。ただ、補助金総額を使い切った時点で支給を打ち切るため、同期限以前に終了する可能性もある。

助成対象となる車両が仮にすべてPHVだとすると、総数は最大40万台となる。ただ、実際にはPHVより助成額が高い電気駆動車を購入する人や企業も少なくないため、総数はそれよりも小さくなる見通しだ。

政府はこのほか、充電スタンド網を拡充するために17年から20年にかけて国が総額3億ユーロの補助金を支給する方針も決めた。計1万5,000カ所のスタンドを新設させる考え。同補助金の内訳は2億ユーロが急速充電インフラ向け、1億ユーロが普通充電インフラ向けとなっている。

助成対象となる環境対応車を社用・公用車として利用する就労者は、勤務先で充電しても金銭以外の形で雇用主から便宜を受けたとは見なされない。このため所得税負担が増える恐れがない。

国はまた、官庁で調達する車両の20%を来年から環境対応車とし、普及を促進する考えだ。

100万台目標を実質撤回

政府は自動車業界代表との間で取り決めたこれらの方針を5月の閣議で正式決定する。同補助金の推進派であるガブリエル経済相は、自動車産業は新しい駆動装置の出現と車両のデジタル化を受けて今後10~20年で根底的に変化すると指摘。転換を支援することは政治の課題だと述べ、理解を求めた。

政府は電気駆動車とPHVの国内登録総数を20年までに100万台へと拡大する目標を掲げている。だが、現時点で登録されているこれら車両の数は5万台にとどまっており、目標実現のメドは立っていない。同経済相は今回の助成策により50万台以上に増えるとの見方を示したが、裏を返せば、100万台の目標が実現できないと認めたことを意味する。

一方、環境対応車向け補助金を否定する立場から容認へと転じたショイブレ財務相は「折り合いをつけることも大切だ。最悪なのはこの問題をめぐる論争が今後さらに何カ月も続くことだ」と述べ、政府内の対立で決定不能に陥ることを避けるために妥協したことを明らかにした。

今回の方針には環境対応車向けの補助金に対する批判を緩和するための措置が2つ取り入れられている。1つは自動車メーカーに補助金の半額を拠出させること、もう1つは助成対象を6万ユーロ以下の車両に制限したことだ。

ドイツの自動車メーカーはここ数年、好業績が続いている。このため、税金を使ってこれらメーカーを支援することに対しては批判が強い。政府はこれを意識してメーカーに補助金の半額拠出を義務づけることにした。

助成対象を6万ユーロ以下の車両に制限したのは、ポルシェのPHVなど高級車を購入するのは富裕層であり、補助金交付に対する納税者の理解を得にくいためだ。