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2016/8/31

総合 - ドイツ経済ニュース

英EU離脱で企業景況感が大幅悪化、消費者景況感には影響なし

この記事の要約

英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定がドイツの景気に影を落とし始めた。ただ、経済界と消費者とでは受け止め方の温度差が大きく、消費者景況感が堅調を保っているのに対し、企業景況感は大幅に悪化した。英国通貨ポンドの急 […]

英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定がドイツの景気に影を落とし始めた。ただ、経済界と消費者とでは受け止め方の温度差が大きく、消費者景況感が堅調を保っているのに対し、企業景況感は大幅に悪化した。英国通貨ポンドの急落を受けて同国向け輸出に陰りが出ていることが響いたもようだ。

Ifo経済研究所が25日発表した8月のドイツ企業景況感指数(2005年=100)は106.2となり、前月の108.3から2.1ポイント低下した。同指数が2ポイント以上落ち込むのは欧州債務危機が深刻化した12年5月以来で、4年3カ月ぶり。エコノミストの間からは、ブレグジットを決めた6月の英国民投票の影響がやや遅れて表れたとの見方が出ている。

現状判断を示す指数が2.0ポイント減の112.8、今後6カ月の見通しを示す期待指数も2.0ポイント下がって100.1となった。部門別では建設を除いてすべて悪化。製造業では特に化学、電機で景況感指数の下落幅が大きかった。新規受注は減少したという。

英国は6月23日の国民投票でEU離脱を決定した。7月の独企業景況感指数はこれを受けて落ち込んだものの、減少幅は小さくブレグジットの影響はあまり出ていなかった。このためエコノミストの間では、8月は景況感指数が上昇するとの見方が強かった。

8月の同指数が実際には大きく落ち込んだことについてINGディバのチーフエコノミストはdpa通信に、「Ifoの指数がグローバルな出来事に1~2カ月遅れで反応することは今回が初めてではない」と指摘。「(ブレグジット決定という)情報の消化にドイツ企業はやや長い時間を要したようだ」との見方を示した。

一方、市場調査大手GfKが26日発表したドイツ消費者景況感指数の9月向け予測値は10.2となり、8月の確定値(10.0)を0.2ポイント上回った。同指数の改善は2カ月ぶり。独企業景況感指数が大幅に悪化したのとは異なり堅調を保っており、景気の見通しに関する指数を除いてすべて上昇した。

景気の見通しに関する8月の指数(9月向け予測値の算出基準の1つ)は前月の9.4から8.6へとやや落ち込んだ。南部のバイエルン州で7月中旬から下旬にかけてテロ事件が相次いで起きたことが響いたとGfKは推測している。長年の平均値であるゼロを上回っていることから、景気の判断自体は良好だ。

所得の見通しに関する8月の指数(同)は前月の49.7から58.3へと8.6ポイント上昇した。雇用の安定、所得の拡大、低インフレなどプラス材料がそろっていることが大きく、高額商品の購入意欲に関する8月の指数(同)も前月の55.4から57.3へと1.9ポイント改善した。

雇用に陰りなし

消費者景況感が安定しているのは英国経済が悪化しても、直接的な影響を受けないためだ。消費マインドを大きく左右する雇用情勢、所得は現在、極めて安定。GfKが景況感調査の一環として7月に実施したアンケート調査では、「ブレグジットで自らが失業する恐れはない」とみる消費者の割合が95%に達した。ブレグジットが企業業績の悪化を通して雇用不安を引き起こさない限り、消費者景況感は冷え込まない。独労働市場・職業研究所(IAB)の8月の労働市場指数はこれまでに引き続き改善しており、雇用情勢に陰りは出ていない。

一方、経済界は英国向け輸出の悪化を通してすでにしわ寄せを受けている。輸出依存度の高い化学、電機、機械、自動車業界では特に影響が大きく、米ゼネラル・モーターズ(GM)の独子会社オペルはリュッセルスハイム、アイゼナハの2工場で年末まで操短を実施する。中型車「インシグニア」と小型車「コルサ」の英国販売が落ち込んでいるためだ。英ポンド安は同社の財務にも影を落としており、GMは今年、欧州事業を17年ぶりに黒字転換させる計画を達成できない可能性が出てきた。