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2012/12/7

総合 – 自動車産業ニュース

低公害車向け「スーパークレジット」、独自工会が適用拡大を要請

この記事の要約

欧州連合(EU)の欧州委員会が提案している2020年を達成期限とする自動車の新たな二酸化炭素(CO2)排出規制案をめぐり、フォルクスワーゲンやBMWなどが加盟するドイツ自動車工業会(VDA)から、低公害車に適用される「ス […]

欧州連合(EU)の欧州委員会が提案している2020年を達成期限とする自動車の新たな二酸化炭素(CO2)排出規制案をめぐり、フォルクスワーゲンやBMWなどが加盟するドイツ自動車工業会(VDA)から、低公害車に適用される「スーパークレジット」と呼ばれる優遇措置の適用拡大を求める声が上がっている。しかし、メーカーに対する奨励策として導入される同制度を拡大すれば実質的な規制緩和につながるため、欧州委は見直しに難色を示している。

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EUはすでに15年までの削減目標を定めた自動車の排ガス規制を導入しているが、20年までにEU全体で温室効果ガス排出量を1990年比で20%削減するという公約の実現に向け、欧州委は今年7月、乗用車と軽商用車のCO2排出量を20年までに現在の水準と比べてそれぞれ約30%、20%削減することをメーカーに義務づける新たな規制案を打ち出した。これによると、各メーカーは20年までに乗用車のCO2排出量を走行1キロメートル当たり平均95グラム以下に抑えなければならない。現行規制は11年時点の平均135.7g/kmを15年までに130g/km以下に削減することを義務付けている。一方、14年から導入される軽商用車の排ガス規制も強化され、各メーカーは10年の平均181.4g/kmを17年に175g/km、20年に147g/kmまで削減することが義務づけられる。

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一方、規制案にはメーカーに対する奨励策として、電気自動車やハイブリッド車などを対象に「スーパークレジット」を適用するルールが盛り込まれている。これはCO2排出量が50g/km未満の低公害車を1台販売するごとに3.5台を販売したとみなし、総排出量を換算後の「みなし台数」で割ることで、他モデルを含めた1台当たりの平均排出量を削減できる仕組み。ただし、同措置は新ルール導入から4年間の期間限定で、適用対象も1社当たり2万台に制限される。

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欧米メディアによると、VDAはスーパークレジット適用の排出基準を緩和すると共に、対象となる販売台数も拡大するよう求めている。広報部門の責任者エックハルト・ロッター氏はロイター通信の取材に対し、「スーパークレジットは優れた制度だが、4年で2万台は少なすぎる」とコメントしている。これに対し、欧州委のバレーロ=ラドロン報道官は、スーパークレジットは「術革新を促すうえで有効だが、対象を拡大しすぎるとCO2排出量の増加につながりかねないと指摘。適用対象を「4年間で2万台」に制限する欧州委案が適切かつ合理的と強調している。

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ただ、スーパークレジットをめぐっては、欧州委員の間でも意見が分かれている。ヘデゴー委員(気候変動担当)は同制度の適用を厳しく制限すべきだとの立場を表明しているのに対し、エッティンガー委員(エネルギー担当)は適用拡大を求めるメーカーの主張に一定の理解を示している。同委員は7月の時点で「生産台数が多いメーカーにとって2万台の上限は低すぎるように思える」と発言していた。

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