2012/5/28

産業・貿易

アルゼンチンをWTO提訴、輸入免許制など保護主義政策に対抗

この記事の要約

欧州委員会は25日、アルゼンチンの輸入規制が国際ルールに違反するとして、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。同国の輸入免許制度やすべての輸入品を対象とする事前審査・登録制度などがEUからの輸出に影響を及ぼし、域内 […]

欧州委員会は25日、アルゼンチンの輸入規制が国際ルールに違反するとして、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。同国の輸入免許制度やすべての輸入品を対象とする事前審査・登録制度などがEUからの輸出に影響を及ぼし、域内企業が多大な損害を受けていると主張している。アルゼンチン政府が4月にスペインの石油大手レプソル傘下のYPFを国有化したのを機に、EUと同国の関係は急速に悪化しており、今回の提訴はフェルナンデス政権が進める保護主義政策への対抗措置と位置付けることができる。

\

EUが最も問題視しているのは、アルゼンチンが2011年に導入した輸入免許制度。欧州委によると、電気機器、自動車部品、化学製品など約600品目が同制度の対象となっている。同国では今年2月、国内の輸入業者に対し、すべての品目について取引の内容を事前に公共歳入連邦管理庁に登録することを義務づけた許可制度が導入された。さらに政府は輸入業者に対し、輸入と輸出のバランスを均衡させることを求めており、実質的にこれが輸入免許を付与する条件となっている。欧州委によると、EUからアルゼンチンへの輸出は11年に83億ユーロに上ったが、一連の「不当な保護主義政策」により、同年だけで5億ユーロの損害が出たと説明している。

\

WTOの紛争解決手続きによると、当事者間の協議で60日以内に問題が解決されない場合、EUは紛争処理機関(DSB)に対して紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請することができる。欧州委のデフフト委員(通商担当)は会見で、今回の提訴がレプソルの案件と直接関係するわけではないと前置きしたうえで、「アルゼンチンの輸入規制は国際ルールに抵触しており、排除されなければならない。同国の不当な措置によってEU経済と域内企業は多大な損害を受けている」と強調。アルゼンチンの貿易・投資環境は「明らかに悪化している」と指摘し、「自由で公正な貿易ルールを堅持するため、同国の保護主義的な輸入制限措置に断固対抗する以外に選択肢はないと判断した」と語った。

\