2015/2/18

総合・マクロ

南ア、原発建設でロシアを優遇か

この記事の要約

南アフリカの原子力発電所新設計画をめぐり、政府がロシア原子力公社(ロスアトム)を優遇する協定を結んだとの観測が浮上している。現地週刊紙『メール&ガーディアン』が内部資料を基に13日付で報じたもので、背景に汚職があると推定 […]

南アフリカの原子力発電所新設計画をめぐり、政府がロシア原子力公社(ロスアトム)を優遇する協定を結んだとの観測が浮上している。現地週刊紙『メール&ガーディアン』が内部資料を基に13日付で報じたもので、背景に汚職があると推定している。

南アは恒常的な電力不足に悩まされており、その解決が緊急課題となっている。政府諮問機関である国家計画委員会はすでに、原発ではなく、再生可能エネルギーやガス火力発電所の可能性を詳細に検討するよう勧告した。それにもかかわらず、ズマ大統領は12日、原発プロジェクトを前倒しで実施する方針を発表。予定を7年早めて2023年に第1号機の運転を開始すると演説した。計画では総出力9,600メガワットの発電能力を整備する。投資規模は1兆ランド(7,500億ユーロ)に上る見通しだ。

政府はすでに入札の準備を進め、フランスのアレバとEDF、東芝の米国子会社ウエスチングハウス、中国の広東核電集団、ロシア原子力公社(ロスアトム)、韓国電力公社(KEPCO)が参加の意向を示している。

ところが、『メール&ガーディアン』が昨年9月のエネルギー省とロスアトムとの協力協定を分析したところ、通例よりも深く踏み込んだ内容となっていることが明らかになった。ロスアトムに一方的に有利で、協定発効後20年にわたり、南アが事実上、他の国と原子力取引を行うことができなくなる。また、税・規制上の優遇、事故時におけるロスアトムの免責なども盛り込まれているという。

南アの電力不足は深刻さを増している。国営電力エスコムは今月3日から輪番停電を実施して対処しているが、その影響で鉱山や工場の生産が落ちている。通貨ランドは12日に対米ドル相場で過去13年の最安値をつけた。

原発計画の前倒し実施について、国家計画委員の一人であるアントン・エーバーハート教授(ケープタウン経済大学院)は「原発は目の前の電力不足の解決にはならない。他の選択肢に比べてコストが高いだけでなく、採算面でのリスクも大きい」と批判する。与党・アフリカ民族会議(ANC)系の労組さえ、「建設が遅れている石炭火力発電所2カ所の完成が先決」と反対している。

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