2012/6/18

環境・通信・その他

排出権は24年まで供給過剰=独研究所リポート

この記事の要約

ドイツの研究機関エコ・インスティトゥート(Öko-Institut)は13日、EU排出量取引制度(EU-ETS)の効率的な運用に向けた調査リポートをまとめ、欧州委員会が設定した第3期間(2013-20年)の排出上限枠を大 […]

ドイツの研究機関エコ・インスティトゥート(Öko-Institut)は13日、EU排出量取引制度(EU-ETS)の効率的な運用に向けた調査リポートをまとめ、欧州委員会が設定した第3期間(2013-20年)の排出上限枠を大幅に引き下げない限り、少なくとも24年まで排出権の供給過剰とそれに伴う排出権価格の下落が続くとの分析結果を明らかにした。同研究所は景気減速による生産活動の停滞や、域外での温室効果ガス排出削減プロジェクトを通じて獲得される排出枠の増加などにより、EUが介入しなければ20年までにおよそ14億2,000万トン相当の排出枠の余剰が生じると試算。現行の政策を維持したままで企業に低炭素技術への投資を促すことは難しいと警告している。

\

エコ・インスティトゥートは環境保護団体グリーンピースと世界自然保護基金(WWF)の委託を受け、今回のリポートをまとめた。EU-ETSの第3期間では新たにアルミおよび化学関連の施設や炭素回収・貯留(CCS)施設が規制の対象となり、段階的にオークションによる割当方法(発電部門は原則として100%オークション)が導入される。排出枠の割り当てに関しては、各国が自国の対象施設への割当量を設定する国内割当計画(NAP)が廃止され、域内の全対象施設で20年の二酸化炭素(CO2)排出量を05年との比較で21%削減するという目標が設定された。具体的には第3期間がスタートする13年の排出上限枠(19億2,700万トン)から毎年1.74%ずつ削減するという内容で、20年までに累計で約2億5,000万トンの排出削減が見込まれる。

\

リポートはEU-ETSが計画通りに運用された場合に生じる排出枠の余剰分(20年時点で推定14億トン超)を最小限に抑え、排出権価格を一定の水準で安定させるためには、05年を基準とした20年時点の削減目標を現行の21%から引き上げて、排出上限枠を大幅に削減する必要があると指摘。削減目標を25%に設定して排出上限枠を13年から毎年2.6%ずつ削減した場合、CO2 1トン当たりの排出権価格は20年までに最大17ユーロ上昇し、さらに削減目標を30%に設定して毎年3.9%ずつ削減した場合は、排出権価格が20ユーロ以上上昇すると試算している。

\