欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/8/24

EU情報

新興国に温効ガス削減目標の早期提出を呼びかけ、欧州委員がCOP21合意に危機感

この記事の要約

欧州委員会のカニェテ委員(気候行動・エネルギー担当)は20日、インドやブラジルなど主要20カ国・地域(G20)を構成する新興国に対し、12月にパリで開催される気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向け、早急 […]

欧州委員会のカニェテ委員(気候行動・エネルギー担当)は20日、インドやブラジルなど主要20カ国・地域(G20)を構成する新興国に対し、12月にパリで開催される気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向け、早急に温室効果ガス排出量の削減目標を国連に提出するよう呼びかけた。同委員はまた、京都議定書に代わる新たな国際的枠組みの策定に向けて「野心的な合意を目指す政治的意思」はみられるものの、交渉の進展が「あまりにも遅い」と指摘。すべての締約国に対して柔軟な姿勢で交渉にあたるよう求めた。

国際社会は2020年以降の温暖化対策の新たな枠組みについて、COP21での合意を目指している。京都議定書は先進国のみに温室効果ガスの削減義務を課したのに対し、新枠組みは途上国を含めたすべての締約国に相応の貢献を求める点が特徴。しかし、先進国側はすべての国に削減義務を課すべきだと主張しているのに対し、新興国と途上国はこれまで大量の温室効果ガスを排出してきた先進国が削減義務を負うべきだと反発。議論は平行線をたどっており、COP21ですべての国が参加する温暖化対策の新たな枠組みを作ることができるかどうか、予断を許さない状況になっている。

カニェテ委員は会見で、これまでに温室効果ガス削減目標を条約事務局に提出した国は190超の締約国のうち56カ国で、排出量ベースでは全体の61%にとどまっていると指摘。こうした状況では、09年のCOP15で各国が合意した「地球全体の気温上昇を産業革命前と比較して2℃未満に抑える」との目標を達成するために必要な温室効果ガス削減量を算出できないと指摘し、「温暖化を抑制するチャンスが失われようとしている。アルゼンチン、ブラジル、インド、インドネシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコなどのG20構成国は速やかに国別目標を提出すべきだ」と訴えた。

EU首脳が新興国に対し、名指しで国別目標の早期提出を促したのは今回が初めて。EU自体は昨年10月、30年までに域内の温室効果ガス排出量を1990年比で40%以上削減するとの目標で合意し、今年3月にパリ合意に向けた削減目標として条約事務局に提出した。京都議定書に参加しなかった米国と中国もこれまでに国別目標を提出している。

一方、EUは合意文書の策定に関して、国別目標に法的拘束力を持たせることや、削減目標の引き上げを視野に5年ごとに国別目標を見直すことなどを提案している。これに対し、米国などはより緩やかな合意とするよう求めており、調整が難航している。カニェテ委員は「技術的な協議を加速させ、COP21で野心的な合意をとりまとめる必要がある」と強調した。