中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2012/8/29

CIS諸国

ウクライナ、ITサービス産業に期待

この記事の要約

ウクライナのITサービス産業は過去10年で急速に拡大し、昨年は輸出高が10億米ドルを突破し、初めて軍需輸出を上回った。ソ連時代から受け継いだ教育機関が優秀な人材を輩出したことがその背景にある。いくつかの課題をクリアできれ […]

ウクライナのITサービス産業は過去10年で急速に拡大し、昨年は輸出高が10億米ドルを突破し、初めて軍需輸出を上回った。ソ連時代から受け継いだ教育機関が優秀な人材を輩出したことがその背景にある。いくつかの課題をクリアできれば、ウクライナの近代化を担う力になると可能性がある。

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ウクライナの大学は多くの科学者を生み出してきたが、ソ連崩壊後の市場環境の変化を受けて、プログラマーを育成するようになった。年間の新卒者数は1万6,000人と推定されている。ITサービスがすでに盛んなロシアやベラルーシに比べ、開発エンジニアの時給は10~30%安い20~30ドル止まり。それでも平均月給(300ドル)に比べると破格のため、優秀な人材が集まりやすい。

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昨年はウクライナのITサービス輸出高が10億ドルの大台に乗った。政府によれば、10年前の10倍に拡大した。金融危機を経験したにも関わらず、年率30~40%の成長を遂げたことになる。米調査会社のソーシングラインによると、アウトソース先の国別ランキングでウクライナは世界26位につけている。世界市場規模(推定)の2,500億ドルに比べると、まだまだ小さいが、大きく伸びる潜在力を秘めている。

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業界の働きかけを受け、ヤヌコビッチ大統領は先月31日にITサービス業界支援策を正式に承認した。IT企業に対する付加価値税(VAT)免除や従業員の所得減税(5%)などがその内容だ。すでに広範囲の優遇措置を適用しているロシアとべラルーシには及ばないが、これらの国を追いかける第一歩とみられている。

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課題は後継者の確保だ。ソ連崩壊後の教育予算縮小で、新卒者は知識水準こそ高いものの、実用の経験が不足している。このため、企業は独自の研修センターを設けて新人を養成しなければならなくなっている。

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上海交通大学が15日発表した最新の世界大学トップ500ランキングでは、ウクライナのどこの大学もランク入りしなかった。もう少し国の助成があれば、事態は違うというのが専門家の意見だ。

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また、現地事業の経験者は社会基盤の老朽化といった平凡な問題も業界の成長を阻んでいると話す。キエフでさえ停電があり、無停電電源装置(UPS)の購入費用がかさんだという。

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