中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2013/1/30

チェコ・スロバキア

チェコ次期大統領に中道左派のゼマン元首相

この記事の要約

チェコで25、26の両日に行われた大統領選挙の決選投票は、中道左派で元首相のミロシュ・ゼマン候補(68)が54.9%を得票し、中道右派の現外相、カレル・シュヴァルツェンベルク候補(75)を破って当選した。ヴァツラフ・クラ […]

チェコで25、26の両日に行われた大統領選挙の決選投票は、中道左派で元首相のミロシュ・ゼマン候補(68)が54.9%を得票し、中道右派の現外相、カレル・シュヴァルツェンベルク候補(75)を破って当選した。ヴァツラフ・クラウス大統領に代わり、3月に就任する。ゼマン氏は初の直接選挙となった今大統領選が、中道右派政府への国民の不信を示す結果となったとして、早期の議会解散・改選を求めた。

\

ゼマン氏は選挙中から、政治に積極関与する「行動する大統領」を目指す姿勢を示していた。拒否権を行使することで、立法に影響を行使していく可能性がある。欧州政策については欧州連合(EU)への統合を進める立場だ。

\

決選投票では、年金生活者や失業者などの社会的弱者に加え、“チェコ人”としてのアイデンティティを求めるナショナリストの票を集めた。第二次世界大戦後にドイツ系住民を国外追放したベネシュ布告を「人権侵害行為」としたシュヴァルツェンベルク氏に対し、「旧ドイツ系住民に資産を返還するつもりだ」などと批判して支持を拡大した。

\

\

チェコ社会の亀裂明確に

\

\

今回の選挙では、◇都市と地方◇高等教育の有無◇高年齢層と若年層――で候補者への支持が分かれ、チェコ社会を分断する亀裂の存在が明らかとなった。ゼマン氏は選挙戦で手段を選ばず対抗候補を批判し、今後も中道左派の立場から政治運営に関与していく方針を示しており、国民を統合する任務をどう果たすのかを懸念する声も出ている。

\

ベネシュ布告はドイツ系住民から国籍をはく奪し、資産没収の上、強制移住させたもので、現在でもドイツとの外交関係に影を落としている。国内ではこの歴史の汚点を中立的に議論する動きはまだ出ていない。

\

シュヴァルツェンベルク氏はゼマン氏との政治討論でベネシュ布告の問題を取り上げ、多くの国民の反発を買った。ゼマン氏はこれに便乗し、資産返還要求を懸念する国民の不安をかきたてた。また、共産主義政権時代に亡命生活を余儀なくされ、昔風のチェコ語を話すシュヴァルツェンベルク氏は「外国人」だとして大統領にふさわしくないと決めつけた。

\

一方で、若い世代ではベネシュ布告を含め、第二次世界大戦時におけるナチス・ドイツへの協力など、現代史におけるチェコ人の暗い過去への関心が高まりつつある。これが、ゼマン氏の攻撃にもかかわらず、シュヴァルツェンベルク氏が45.1%もの票を得た事実に現れているようだ。

\