2010/7/5

産業・貿易

EU・米が銀行取引データ提供協定に調印、欧州議会は承認の意向

この記事の要約

EUと米国は6月28日、テロ資金根絶を目的とする銀行取引データの米国への提供に関する協定に調印した。欧州議会は個人情報の保護が脅かされるとして、EU加盟国と米政府が昨秋に合意した暫定協定の承認を拒否した経緯があり、対応が […]

EUと米国は6月28日、テロ資金根絶を目的とする銀行取引データの米国への提供に関する協定に調印した。欧州議会は個人情報の保護が脅かされるとして、EU加盟国と米政府が昨秋に合意した暫定協定の承認を拒否した経緯があり、対応が注目されていたが、主要会派は当初の内容に比べて著しい改善がみられるとして承認する意向を示している。このため早ければ8月にも新協定が発効し、国際銀行間通信協会(SWIFT)を通じたデータ提供が再開される見通しとなった。

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EU議長国スペインのルバルカバ内務相とドッドマン駐EU米国大使館経済担当官がブリュッセルで協定に調印した。新協定の有効期限は5年間。米当局はテロ資金追跡プログラム(TFTP)に基づいて、SWIFTに送金データや顧客に関する個人情報の提供を求めることができ、提供されたデータは5年間保持される。

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ただし、米側はEUにテロとの関与を疑う根拠を示す必要があり、一方、欧州刑事警察機構(ユーロポール)は要求された情報がテロ防止やテロ組織の資金源を突き止めるうえで「必要かつ最小限」の範囲かどうかを事前に検証し、条件を満たしていない場合は情報提供を差し止めることができる。協定にはこのほか◇提供された情報が不正確な場合、米側はただちにデータを削除または修正しなければならない◇提供されたデータが不正に使用された場合、米国の司法制度に基づいて法的救済を求める権利を保証する◇第3国にデータを転送する場合はさらに厳格な個人情報保護ルールを適用しなければならない◇EUの当局者が米側へのデータの引き渡しに立ち会う――などが盛り込まれている。

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調印に立ち会った欧州委員会のマルムストロム委員(内務担当)は「新たな協定により、個人情報を保護しながら、同時に世界中の人々の安全を守るためのテロ対策プログラムを維持することができる」と強調。今月5-8日に開催される欧州議会本会議での承認を経て、8月1日付で新協定が発効するとの見通しを示した。

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一方、欧州議会中道左派の欧州社会党グループを率いるシュルツ議員は声明で「EUと米国は相互に協力して市民をテロから守る義務を負っているが、同時に個人情報保護の原則も守られなければならない。激しい議論の末、EU加盟国はようやく欧州議会の要求する(データ提供を認めるための)条件にたどり着いた」と指摘。新協定を承認する意向を表明した。また、中道右派の欧州人民民主党も新協定について「高いレベルの個人情報保護が確保されている」と評価。「本会議で過半数の承認を得られる可能性は高い」との見方を示している。

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