2010/9/20

産業・貿易

米政府のボーイング向け補助金は「違法」=WTO中間報告

この記事の要約

航空機メーカーへの補助金をめぐるEUと米国の通商紛争に関連して、世界貿易機関(WTO)は15日、米政府によるボーイングへの公的支援に対する紛争処理小委員会(パネル)の中間報告を双方に提示した。報告書の内容は公表されていな […]

航空機メーカーへの補助金をめぐるEUと米国の通商紛争に関連して、世界貿易機関(WTO)は15日、米政府によるボーイングへの公的支援に対する紛争処理小委員会(パネル)の中間報告を双方に提示した。報告書の内容は公表されていないが、複数のEU関係者によると、パネルはボーイングが米政府から不当な補助金を受けていたと認定した。パネルは今年6月、エアバスに対するEU加盟国の補助金を違法とする最終報告をまとめており、これで双方は1勝1敗の形。米政府はコメントを控えているが、欧州委員会は話し合いによる解決を探る方針を示しており、市場では今回のパネル裁定を機に、7年目に入るWTO史上最大級の通商紛争が解決に向けて動き出すとの見方も出ている。

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補助金紛争で焦点となっているのは、エアバスとボーイングの新たな主力旅客機「A380」と「787(通称ドリームライナー)」の開発に関連した公的支援策。航空機市場で急速にシェアを拡大し、ボーイングと肩を並べる企業に成長したエアバスが依然としてEUから公的補助を受けているのはWTOの協定に違反するとの米側の主張に対し、EUはボーイングも連邦政府などからの総額237億ドルに上る資金援助で開発した軍用機向けのテクノロジーを活用してドリームライナーの開発を進めており、これは米政府による間接的な補助金にあたると反論。双方は2004年10月、両社に対する支援策は不当な補助金にあたるとして相次いでWTOに提訴した。EUはボーイングが国防総省と米航空宇宙局(NASA)からあわせて160億ドル、カンザス、ワシントン、イリノイの3州から税制上の優遇措置を通じて少なくとも40億ドルを受け取ったと主張している。

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欧州委のデグフト委員(通商担当)は「パネルの結論はEUの見解を支持するものだ」との声明を発表。「航空機メーカーに対する補助金の問題は、話し合いを通じてのみ解決が可能だとの思いを強くしている」と述べ、報告書の内容を詳しく分析したうえで米側に交渉を呼びかける意向を示した。一方、ボーイングはパネル裁定について「(同社が数百億ドルに上る違法な補助金を受けたとの)EU側の主張のうち、多くの点が認められなかった」と強調。「EU側はWTOが違法と判断したにもかかわらず、エアバスに対する資金支援を継続している」と指摘し、EU側の対応を強く非難した。

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