2011/12/12

産業・貿易

エアバス補助金問題で米が制裁か、EUの是正を不十分と判断

この記事の要約

欧州の航空機大手エアバスへの公的支援をめぐるEUと米国の通商紛争で、米通商代表部(USTR)は9日、EUが世界貿易機関(WTO)に報告した是正策を拒否する方針を発表した。USTRはEU加盟国が依然としてエアバスの次世代中 […]

欧州の航空機大手エアバスへの公的支援をめぐるEUと米国の通商紛争で、米通商代表部(USTR)は9日、EUが世界貿易機関(WTO)に報告した是正策を拒否する方針を発表した。USTRはEU加盟国が依然としてエアバスの次世代中型旅客機「A350」に資金支援を行っていると指摘し、EU側にさらなる対応を求める一方、WTOに対して年間70-100億ドル規模に上る報復的措置の発動許可を申請したことを明らかにした。

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欧州委員会は今月1日、エアバスに対するEU加盟国の資金支援が違法な補助金にあたると結論づけたWTO上級委員会の裁定を受け、同委の勧告に沿って是正措置を講じたとする報告書を提出した。具体的な内容は公表されていないが、欧州委は「WTOの裁定で指摘されたすべてのエアバス機の問題」に対処すると表明していた。

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ただ、米政府が最も問題視しているA350は米国がWTOにEUを提訴した2004年以降に開発が始まったため、上級委は同機種に対するEU加盟国の開発支援について直接判断を示していない。米国は他の機種と同様、A350に対するローンチエイドも違法な補助金にあたると主張し、EUに対してすべての公的支援を打ち切るよう求めている。

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USTRは声明で、報告書を検証した結果、「EUは問題になっている補助金を撤回しておらず、実際には大型旅客機(A350)の開発および生産に新たな補助金を拠出していると考えられる」と指摘。カークUSTR代表は「WTOはエアバスが製造したあらゆる機体に対するすべてのローンチエイドが違法な補助金にあたり、米国の産業界と雇用に悪影響をもたらしたと明確に認定した」と強調。EUがすべての違法な資金支援を打ち切らない限り、WTOの勧告に沿った是正措置を履行したとは認められないとの立場を改めて示した。

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米政府による今回の動きは、過去の不正な補助金を撤回するだけでなく、EUから将来にわたってエアバスへの公的支援を行わないとの確約を取り付けることが狙いで、実際に制裁発動に踏み切る可能性は低いとみられる。しかし、米政府によるボーイングへの資金支援をめぐるWTOの最終的な裁定が出ていない段階でEUが米側の要求に応じるとは考えにくく、2004年から続くEU・米間の紛争はさらに長期化しそうだ。

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