2012/11/5

総合 –EUウオッチャー

米国務長官とアシュトン上級代表、セルビアとコソボに対話促進要求

この記事の要約

クリントン米国務長官とEUのアシュトン外交安全保障上級代表は10月31日、バルカン諸国歴訪の一環として、コソボのヤヒヤガ大統領、サチ首相と首都プリシュティナで会談し、セルビアとの対話を進めるよう促した。クリントン長官らは […]

クリントン米国務長官とEUのアシュトン外交安全保障上級代表は10月31日、バルカン諸国歴訪の一環として、コソボのヤヒヤガ大統領、サチ首相と首都プリシュティナで会談し、セルビアとの対話を進めるよう促した。クリントン長官らは前日にベオグラードでセルビアのニコリッチ大統領、ダチッチ首相とも会談し、2008年に同国からの独立を宣言したコソボとの関係正常化に向け、対話を加速させるよう要求。アシュトン上級代表はコソボとの対話促進がEU加盟を実現するうえで鍵を握るとの考えを改めて強調した。

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コソボは米国の強い後押しを受けてセルビアから独立を宣言した経緯があり、EUでは国内に民族問題を抱えるスペイン、ギリシャ、キプロス、スロバキア、ルーマニアを除く22カ国がコソボの独立を承認している。しかし、セルビアは断固として独立を認めない方針で、歴史的にセルビアと関係の深いロシアも反対の立場を表明している。ただ、セルビアとコソボが目指すEU加盟を実現するには双方の関係改善が不可欠で、両者はEUの仲介で11年3月に政治対話を開始。対話の成果が認められ、セルビアは今年3月にEU加盟候補国として正式に認定された。しかし、5月に行われたセルビアの議会選挙で、極右民族派政党から分派したセルビア進歩党が第1党となって以降、両者の対話は中断されたままになっている。

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クリントン長官はセルビアとコソボ訪問で、「コソボは独立した国家の地位を得ており、領土の変更や独立国家の地位の見直しに関するいかなる議論にも反対する」と明言し、セルビア系住民が多数派を占めるコソボ北部を分離する案を一蹴。一方、セルビアに対しては「コソボ承認が政治的に困難であることは理解できる」と配慮を示し、「対話を進めるうえでコソボの承認は必要」ないと述べて対話の促進を求めた。また、アシュトン上級代表は、バルカン諸国のEU加盟が欧州全体の平和と繁栄につながると強調し、EUが仲介役となって双方の関係正常化に向けた対話を後押しする考えを示した。

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これに対し、セルビアのダチッチ首相は「断じてコソボの独立を認めることはできないが、対話の用意はある」と応じた。一方、コソボのサチ首相は「セルビアとの対話はEU加盟を実現するための唯一の道であり、コソボとセルビアの関係正常化は双方および地域全体の利益になる」と発言。セルビアとの対話に前向きな姿勢を見せた。

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