2012/11/19

産業・貿易

銀行の自己資本規制、12月の財務相理で最終合意へ

この記事の要約

欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)は13日、金融危機の再発防止を目的とする国際的な銀行資本規制「バーゼルⅢ」に基づく新たな規制案について、予定される2013年1月の導入に向け、EU加盟国と欧州議会の間 […]

欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)は13日、金融危機の再発防止を目的とする国際的な銀行資本規制「バーゼルⅢ」に基づく新たな規制案について、予定される2013年1月の導入に向け、EU加盟国と欧州議会の間で年内の合意は可能との見解を表明した。米金融当局は今月9日、法整備の遅れを理由に導入を先送りする方針を打ち出しており、他の国への影響が懸念されているが、バルニエ委員は国際金融システムを強化するためEUは率先して主要国が合意した期限を順守する必要があると強調。12月4日に開く財務相理事会での最終合意を目指して意見調整を進めたい考えを示している。

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バーゼルⅢは国際的に業務展開する銀行に対し、普通株と内部留保で構成する狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率を2019年までに7%まで引き上げることを求めている。EU加盟国は5月の財務相理事会で◇域内の全銀行を対象に、コアTier1比率を現在の2%から15年までに4.5%に引き上げ、19年には7%の達成を義務づける◇各国の金融当局がそれぞれの権限で、自国の銀行に対して最大3%の資本の上積み(資本バッファー)を課すことができる仕組みを導入する――などで合意した。しかし、英国などはより厳格な規制が必要との立場から、各国当局が独自の判断でEU基準より高い自己資本比率を設定できるようにすべきだと主張しており、裁量権の範囲をめぐって最終的な調整が難航している。一方、欧州議会は銀行員に対する報酬規制を厳格化すべきだと主張しているのに対し、加盟国の間では、過度の規制は優秀な人材の流出につながり、域内の銀行が競争力を失うことになりかねないといった意見が根強い。

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13日にはブリュッセルで加盟国、欧州議会、欧州委員会の代表による会合が開かれ、カラス欧州議員によると3者は16項目で合意に達した。バルニエ委員は報道陣に対し、各国の金融当局が自国の銀行にEU基準を上回る資本の上積みを義務づける場合の裁量権の範囲と、報酬規制が残る主な争点と説明。資本バッファーに関しては、「より一層の柔軟性を求める加盟国の立場は理解できるが、各国当局に過度の裁量権を与えれば域内市場のメリットが損なわれることになる」と指摘した。一方、報酬規制に関しては、短期の業績に連動した高額報酬制度がトレーダーなどのリスク行動を助長し、金融危機が拡大する要因になったとの反省に立ち、より一段の規制が必要と強調。固定給を超える賞与(ボーナス)支給を禁止するという欧州議会の提案に支持を表明し、「加盟国は野心的な目標を掲げるべきだ」と述べた。

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20カ国・地域(G20)の中央銀行や金融監督当局などで構成する金融安定化理事会(FSB)は10月31日、EUや米国を含む多くの国・地域でバーゼルⅢの適用に向けた法整備などの準備が遅れており、来年1月の導入に向けて必要なすべての措置を実施したのは新規制の導入を計画している27カ国・地域のうち、日本、豪州、中国、香港、インド、サウジアラビア、シンガポール、スイスの8カ国・地域にとどまるとの報告書をまとめた。こうしたなか、米連邦準備制度理事会(FRB)は9日、中小銀行の準備が遅れていることなどを理由に「来年1月に新ルールを発効できる状況ではない」との声明を発表。米国ではバーゼルⅢの適用を当面見送る方針を明らかにしている。

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