2012/12/3

産業・貿易

格付け会社規制案で合意、1月にも新ルール導入へ

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会、欧州委員会は11月27日、EU域内で活動する格付け会社に対する新たな規制案の内容で合意した。ソブリン債の格付けを行う場合、予め設定したスケジュールに沿って年3回の格付け見直しを義務付けることや、投資 […]

EU加盟国と欧州議会、欧州委員会は11月27日、EU域内で活動する格付け会社に対する新たな規制案の内容で合意した。ソブリン債の格付けを行う場合、予め設定したスケジュールに沿って年3回の格付け見直しを義務付けることや、投資家と格付け会社による株式持ち合いを制限することなどを柱とする内容。欧州議会とEU閣僚理事会の正式な承認を経て、早ければ来年1月にも新ルールが導入される。

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EUはすでに登録制を導入するなど、域内で活動する格付け会社に対する監視を行っているが、加盟国の間で不透明な判断基準に基づく国債の格下げが欧州の債務危機を悪化させたとの批判が高まっていた。欧州委は格付けの透明性を高めるため、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ・レーティングスの大手3社による寡占状態を改善する必要があるとして、2010年11月に「輪番制」の導入などを盛り込んだ規制強化策を発表。加盟国と欧州議会で検討が進められていた。

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欧州議会の代表、EU議長国キプロス、前議長国デンマーク、欧州委による調停委員会で合意した規制案によると、格付け会社はソブリン債の格付けに際し、予め年3回の格付け公表日を設定して各国政府に通知しなければならず、公表時には判断の根拠を示す調査および分析結果など必要な情報を開示することが求められる。また、公表のタイミングは「域内の取引所における取引終了後、または取引開始の1時間前まで」と規定されている。

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一方、利益相反を防いで格付けプロセスの公正性を確保するため、投資家などが複数の格付け会社に出資できる上限を5%に制限して情報開示を義務づける一方、格付け会社に対しては、10%以上出資している企業の格付けを禁止するルールが導入される。欧州委の原案ではこの比率が2%となっていたが、業界側の強い反発で上限が引き下げられた。

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このほか投資家保護の観点から、格付け会社の故意または重大な過失によって損失が生じた場合、居住国の法律に基づいて損害賠償を請求できる制度が導入される。一方、輪番制に関しては、適用対象が債務担保証券(CDO)などの再証券化商品に限定され、同じ格付け会社を継続して起用できる期間も原案の3年から5年に延長される。また、外部機関が行う格付けへの過度の依存を抑制するため、欧州議会では欧州独自の格付け機関を設立する案も検討されたが、今回は導入が見送られた。ただし、欧州議会と加盟国はさらなる格付けの透明性向上に向け、EUが独自に加盟国の信用力を評価するシステムの構築を含めて欧州委が引き続き検討を進めることで合意した。

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