2012/12/3

欧州ビジネスウオッチ

ミタルが仏溶鉱炉の閉鎖回避で合意、雇用確保で国有化見送り

この記事の要約

業績悪化に直面する鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)が仏北部の溶鉱炉2基を閉鎖する方針を打ち出していた問題で、エロー仏首相は11月30日、ミタルが全従業員の雇用を維持することで合意したため、同施設を一 […]

業績悪化に直面する鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)が仏北部の溶鉱炉2基を閉鎖する方針を打ち出していた問題で、エロー仏首相は11月30日、ミタルが全従業員の雇用を維持することで合意したため、同施設を一時国有化する計画を見送ると表明した。仏政府は雇用確保のため、交渉期限の12月1日午前零時までに妥結できない場合、同施設の閉鎖回避に向けて一時国有化する方針を示唆していた。

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ミタルは欧州景気の低迷に伴う鉄鋼需要の落ち込みで急速に業績が悪化し、すでにベルギーの溶鉱炉を閉鎖するなど生産能力を大幅に縮小している。同社は10月初め、新たな合理化策として、ドイツとルクセンブルクの国境に近いフロランジュにある溶鉱炉2基を閉鎖し、従業員650人を削減する計画を打ち出した。仏政府はミタルに対し、すでに稼働を停止している同施設の雇用維持を強く要求。オランド大統領は11月27日に行ったラクシュミ・ミタル最高経営責任者(CEO)との協議で、ミタルが期限までに全従業員の雇用維持を確約するか、施設全体の売却先が見つからない場合、閉鎖回避のため一時国有化に踏み切る可能性に言及していた。

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仏政府によると、ミタルは向こう5年間に1億8,000万ユーロを投じてフロランジュの施設維持および改善を図ると共に、650人の削減計画を撤回することで合意した。ただし、鉄鋼需要の回復が見込めないことから、溶鉱炉2基の再稼働は当面見送られる。エロー首相は記者団に対し、フロランジュでの人員削減は回避されるとの見通しを示し、同施設の「一時国有化は見送る」と明言。また、EUから二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトに対する補助金交付が承認された場合、同施設に1億5,000万ユーロの公的資金を投入する計画があることを明らかにした。そのうえで首相は、ミタルは政府との合意を「最大限に尊重しなければならない」と強調し、公約が守られない場合は「実行可能なあらゆる手段」を講じることになると警告している。

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