2013/1/14

産業・貿易

バーゼルIIIの銀行流動性規制、導入期限延期と基準緩和で合意

この記事の要約

バーゼル銀行監督委員会の上位機関である中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(GHOS)は6日、銀行に流動性の高い資産の保有を義務づける規制案について協議し、完全実施を4年先送りして2019年とする一方、内容も大幅に緩和 […]

バーゼル銀行監督委員会の上位機関である中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(GHOS)は6日、銀行に流動性の高い資産の保有を義務づける規制案について協議し、完全実施を4年先送りして2019年とする一方、内容も大幅に緩和することで合意した。予定通りに規制が導入された場合、基準を満たすため銀行が融資を抑制し、それによって景気回復が阻害されるおそれがあると判断した。

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GHOSが大幅な見直しで合意したのは「流動性カバレッジ比率(LCR)」と呼ばれる規制。金融危機の再発防止を目的に立案された銀行の資本・流動性に関する新たな規制「バーゼルIII」を構成し、自己資本比率規制と並ぶもう1つの柱と位置付けられている。LCRは国際的に展開する大手銀行に対し、信用収縮が起きた場合でも30日間は自力で資金繰りをつけられるよう、売却しやすい国債などの資産を十分に保有することを義務づける内容。2010年に策定された原案では15年の導入となっていたが、欧米の銀行からは、同年までに流動性資産の最低基準を満たすことは困難との見方が出ていた。

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今回の見直しにより、LCR規制は当初の計画を実質的に4年遅らせ、19年までの段階導入となる。銀行は15年1月までにLCR基準の60%を達成しなければならず、その後毎年10%ずつ引き上げて19年1月以降は100%とすることが求められる。一方、原案ではLCR基準を満たすために算入できる資産は現金化しやすい国債や社債などに限定されていたが、今回の合意により、上場株式や一定の要件を満たした住宅ローン担保証券(RMBS)なども適格流動性資産として算入することが認められる。

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GHOSの議長を務める英中銀イングランド銀行のキング総裁は「LCRはバーゼルIIIの枠組みの主要な要素であり、今回の合意は極めて大きな成果といえる。銀行規制の歴史で初めて、銀行の流動性に関する国際的な最低基準が設けられることになる。新たな流動性規制が景気回復に向けた融資を妨げるおそれはなくなった」と説明している。一方、欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)は「流動性の確保は金融システムの安定と、景気回復に向けて銀行が果たす役割の両面で土台となるものだ」と指摘。「GHOSの決定はEUが指摘した問題に対処している」と述べ、主要国の金融当局が原案を大幅に緩和する内容で合意したことを歓迎した。

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