2013/5/13

産業・貿易

オイルサンドめぐりWTO提訴を検討、FTA交渉には影響せず=カナダ

この記事の要約

カナダのオリバー天然資源相は8日、EUがオイルサンド由来の原油を温室効果ガス排出量の多い化石燃料に分類することを提案しているのに対抗するため、世界貿易機関(WTO)への提訴を検討していることを明らかにした。原油埋蔵量の大 […]

カナダのオリバー天然資源相は8日、EUがオイルサンド由来の原油を温室効果ガス排出量の多い化石燃料に分類することを提案しているのに対抗するため、世界貿易機関(WTO)への提訴を検討していることを明らかにした。原油埋蔵量の大部分をオイルサンドが占める同国に対する差別的な扱いだというのがカナダ側の主張。ただし、EUとの自由貿易協定(FTA)については引き続き早期の妥結を目指す方針を示している。

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オイルサンドは流動性のない高粘度の重質油を含む砂および砂質岩で、オイルサンド由来の原油は通常の原油に比べて二酸化炭素(CO2)排出量が20%以上も多いとされる。EUは2009年、域内の燃料供給事業者に対し、20年までに燃料製品の温室効果ガス排出量をライフサイクル全体で6%削減することを義務づけた「燃料品質指令」を採択。欧州委員会は同指令の実施に向けた具体策の中で、燃料供給事業者がCO2排出量の多い燃料を識別するためのリストにオイルサンドを加えることを提案している。一方、カナダは世界3位の原油埋蔵量を持つが、オイルサンドが大半を占めるため、欧州委の提案に強く反発している。

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オリバー天然資源相は訪問先のロンドンで、オイルサンドに対する規制はカナダの輸出品に対する差別的な扱いにあたり、国際貿易ルールに違反すると指摘。「WTOへの提訴を含めた措置を検討している。われわれは自国の利益を保護しなければならない」と述べた。そのうえで同相は、オイルサンドとFTAは「完全に別の問題」と強調し、オイルサンドをめぐる対立をFAT交渉の材料として利用することはないと明言した。

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これに対し、駐カナダEU代表部のブリンクマン大使は9日、地元記者との意見交換の場でオリバー天然資源相の発言に触れ、燃料品質指令の実施ルールは「科学的根拠に基づいた非差別的なもの」だと強調。EUはWTOルールを完全に遵守していると述べた。

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一方、同大使はEUとカナダのFTA交渉について、最終的な合意に近づいているものの、農業分野でなお困難な問題が残っていると指摘。「すべての分野で着地点が見えたと認識しているが、他の多くの交渉と同様、農業分野は最も調整が難しい課題だ」と述べ、カナダ産牛肉とEU産チーズが最大の焦点になっていることを明らかにした。

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