2013/6/3

総合 –EUウオッチャー

仏などの赤字是正期限延長、財政緊縮一辺倒から方向転換=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は5月29日発表した加盟国の経済・財政に関する勧告書で、EUの財政規律に違反しているフランス、スペインなどについて、赤字是正期限を延長することを提案した。厳しい財政緊縮が欧州の景気を大きく圧迫していることを受け […]

欧州委員会は5月29日発表した加盟国の経済・財政に関する勧告書で、EUの財政規律に違反しているフランス、スペインなどについて、赤字是正期限を延長することを提案した。厳しい財政緊縮が欧州の景気を大きく圧迫していることを受けたもので、赤字削減のペースを緩め、構造改革を強化することによって財政健全化を図る。緊縮一辺倒から成長、雇用重視へのシフトを明確に打ち出した格好だ。

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同勧告書は、財政赤字がEUの財政規律である安定成長協定で上限として定められている国内総生産(GDP)比3%を超えている国のうち、フランス、スペイン、スロベニア、ポーランドの赤字是正期限を2年延長することを提案。オランダ、ポルトガル、ベルギーは同1年の延長を打ち出した。さらに、イタリア、ハンガリー、ルーマニア、ラトビア、リトアニアについては赤字削減の努力を評価し、過剰赤字の是正手続きに基づく要監視国リストから除外することを決めた。勧告内容は6月末のEU首脳会議で承認される見通しだ。

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EUはギリシャに端を発した欧州債務危機への対応として、財政悪化国に増税、歳出削減など厳しい緊縮策の実施を求めてきた。しかし、これが各国の経済を直撃して景気低迷が長期化し、財政再建を難しくするという悪循環に陥っている。雇用悪化も深刻で、過去最悪を更新し続けている(後続記事参照)。

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欧州委は債務危機が峠を越え、金融市場の混乱も落ち着きつつあることから、「一息できる余裕ができた」(レーン経済通貨問題担当委員)として、各国が財政緊縮のペースを緩め、その間に労働市場の流動性強化など構造改革を進め、将来の成長の土台を築く方向に転換した。赤字是正期限の延長は、これらの構造改革に取り組むことが条件となる。

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