2010/8/30

総合 –EUウオッチャー

欧州委が仏のロマ排除に懸念表明、EU法との整合性を検証

この記事の要約

フランス政府が犯罪対策の一環として国内に暮らす少数民族ロマを出身国のルーマニアなどに送還している問題で、欧州委員会は25日、EU市民の移動の自由を保障したEU法との整合性を検証する方針を明らかにした。イタリア政府もフラン […]

フランス政府が犯罪対策の一環として国内に暮らす少数民族ロマを出身国のルーマニアなどに送還している問題で、欧州委員会は25日、EU市民の移動の自由を保障したEU法との整合性を検証する方針を明らかにした。イタリア政府もフランスに追従する構えを見せており、欧州委は特定の集団を国内から排除しようとする一部加盟国の動きに警戒を強めている。

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サルコジ政権は7月下旬にロマ人の違法滞在者や犯罪者を出身国に強制送還する方針を発表。8月上旬から違法キャンプの撤去を開始し、これまでに600人以上をルーマニアとブルガリアに帰還させた。一方、イタリアのマローニ内相も地元紙とのインタビューで、治安維持を理由に国内のロマを強制送還する考えを表明。近く他のEU加盟国に同措置を認めるよう求める方針を示した。

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こうした動きを受け、欧州委のレディング副委員長(司法・基本権・市民権担当)は一部加盟国によるロマ排除の動きを「強く懸念している」との声明を発表した。同氏は各国政府には国内の治安を維持する責任があるとしたうえで、すべてのEU加盟国は移動の自由を保障したEUルールを尊重しなければならず、「ロマ人だという理由だけで不当に排除されることがあってはならない」と強調。フランスの現状を詳しく分析し、政府が講じた一連の措置がEU法に抵触しないか精査するようスタッフに指示したことを明らかにした。欧州委の報道官はこれを受け、3日までに報告書をまとめる意向を示している。

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EU主要国は9月6日にパリで内相会議を開き、ロマの扱いについて協議する予定。市民の移動の自由は最も重要なEUの基本理念の1つだが、新旧加盟国間の所得格差やフランス、ドイツ、イタリアなどへの労働者の大量流入への懸念から、2007年にEUに加盟したルーマニアとブルガリアの国民に対し、既存加盟国は最長で13年末まで移動の自由を制限することが認められている。仏政府はこうした移動制限に関する規定を盾にロマ対策の正当性を主張しているが、欧州議会のリベラル会派は仏政府の対応を強く避難し、9月に再開される本会議で議題に取り上げる意向を示している。さらに人権団体やカトリック教会などからもロマの国外送還に対する批判の声が上がっている。

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