2010/9/6

産業・貿易

金融監督制度改革で加盟国と欧州議会が合意、11年1月に新機関創設

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会は2日、金融危機の再発防止に向けた金融監督制度改革案の内容で合意した。金融システム全体のリスクを監視する「欧州システミック理事会(ESRB)」と、国境を越えて銀行・保険・証券の各セクターを管轄する3つ […]

EU加盟国と欧州議会は2日、金融危機の再発防止に向けた金融監督制度改革案の内容で合意した。金融システム全体のリスクを監視する「欧州システミック理事会(ESRB)」と、国境を越えて銀行・保険・証券の各セクターを管轄する3つの監督機関の新設が制度改革の柱。EUレベルで金融危機再発のリスクを監視し、危機に際して迅速に対応できる体制を整える。7日のEU財務相理事会と今月下旬に開かれる欧州議会本会議の正式承認を経て、2011年1月に新体制が発足する見通しだ。

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金融監督制度改革は欧州委員会が昨年5月に草案を提示。新設する4つの機関に付与する権限の範囲や設置場所などをめぐって加盟国と欧州議会の間で調整が続いていた。欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は声明で「極めて重要な合意を形成することができた。EUは金融市場のリスクを見極めるための管制塔とレーダー表示器を獲得することになる」と強調した。

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新体制では銀行・保険・証券市場を監視するセクター別の委員会に代わり、欧州銀行監督機構(EBA)、欧州保険・年金監督機構(EIOPA)、欧州証券監督機構(ESMA)が新設される。3機関はそれぞれロンドン、フランクフルト、パリに本部を置き、国境を越えて活動する大手金融機関の監視を行う。各機関はEU各国の当局者間の調整や、EUルールが適正に運用されるための解釈や基準の策定といった機能を担うほか、問題がある金融機関に対して対応を直接指示する権限を持つ。従来のセクター別委員会は欧州委に助言を行う諮問機関の位置付けにとどまり、各国当局が協調して金融市場を監督するシステムは整っていなかったが、今後は監督体制を一元化して EUレベルでのリスク監視および危機対応を強化する。

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セクター別監督機関の設置場所をめぐり、欧州議会は各機関が相互に連携しやすいよう、欧州中央銀行(ECB)のあるフランクフルトに集中させるよう求めていたが、加盟国が強く反対。両者の間で調整が難航していたが、欧州委が3機関の統合の是非を含めて3年ごとに見直しを行うことを条件に、3都市への分散配置が決定した。なお、証券市場を監視するESMAには新たに格付け会社の監督権限が付与される。

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一方、マクロ面から金融システム全体を監視するESRBは特定の国や金融機関の抱えるリスクが欧州全体に波及する危険を分析し、必要に応じて各国当局に警告を発したり対応策を勧告する。ESRBは欧州各国の中央銀行を中心に構成されるが、欧州議会の強い働きかけで設立から5年間はECB総裁が議長を務めることになった。初代議長にはトリシェECB総裁が就く。

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