2012/5/14

総合 –EUウオッチャー

緊縮財政は雇用と成長に悪影響=ILO報告書

この記事の要約

国際労働機関(ILO)は4月29日に発表した世界の労働市場に関する年次報告書で、信用不安に揺れる欧州が進める財政緊縮路線が雇用の回復に悪影響を及ぼし、優秀な人材の不足に拍車をかけていると警鐘を鳴らした。\ 報告書は、ユー […]

国際労働機関(ILO)は4月29日に発表した世界の労働市場に関する年次報告書で、信用不安に揺れる欧州が進める財政緊縮路線が雇用の回復に悪影響を及ぼし、優秀な人材の不足に拍車をかけていると警鐘を鳴らした。

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報告書は、ユーロ圏各国は優先的な政策として緊縮財政や労働市場改革を進め、信用不安の余波で中小企業が資金繰りに苦しみ、雇用を増やせない状況にあると指摘する。EU統計局ユーロスタットによると、ユーロ圏の失業者数は約2,500万人。加えて失業期間が長期にわたり就職をあきらめる人も年々増加しており、2011年には860万人にのぼった。長期失業者の増加は労働者のスキルを喪失させ、高度な技術を持つ労働者の不足を招く。ユーロ圏の失業率は10%を超え過去最悪の水準に達しているにもかかわらず、科学技術やエンジニアリング、数学などの分野では人手不足が常態化しており、数百万件ものポストが空席となっているという。

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ILOは雇用の悪化について「労働者のスキルと意欲の喪失という点で莫大な経済的損失であり、人的資本価値の低下につながる」と指摘。労働市場の規制緩和と財政緊縮の組み合わせは短期的な雇用展望の促進に結びつかないとし、公共投資を促進するとともに雇用と成長を前提条件としながら社会的に責任ある形で財政再建に取り組むことが重要であるとしている。

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