2012/11/12

総合 –EUウオッチャー

観光業振興へビザ発給簡素化、欧州委が提言

この記事の要約

欧州委員会は7日、EU内における観光産業の振興を目的とした共通査証(ビザ)政策に関する提言をまとめた。第3国からEU諸国への渡航を容易にして観光客を誘致し、経済成長と雇用創出につなげるのが狙いで、ビザ発給手続きの簡素化な […]

欧州委員会は7日、EU内における観光産業の振興を目的とした共通査証(ビザ)政策に関する提言をまとめた。第3国からEU諸国への渡航を容易にして観光客を誘致し、経済成長と雇用創出につなげるのが狙いで、ビザ発給手続きの簡素化などを柱とする内容。欧州委は同時に、カリブ海や太平洋などの島国16カ国を対象に、シェンゲン協定加盟国へのビザなし渡航を認める方針を打ち出した。欧州議会と閣僚理事会の承認を経て実施に移す。

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EUでは観光業が経済成長と地域開発をけん引する基幹産業の1つになっている。欧州委によると、観光業に従事するEU市民は2011年の1,880万人から2022年には2,040万人に増加し、域外からの渡航者がもたらす経済効果は3,304億ユーロから4,273億ユーロに拡大するとみられている。一方、域外からの渡航者に対するビザ発給件数もこのところ急増しており、たとえば中国人に対するビザ発給数は08年の56万件から昨年は約2倍の102万6,000件、ロシア人についても08年の350万人に対して昨年は515万2,000人と大幅に増加している。

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しかし、欧州委はEUに大きな経済効果をもたらす域外からの観光客の誘致を一段と促進する必要があるとして、加盟国の領事館に対し、ビザの申請から承認までの期間(最大15日間)などを定めた現行ルールの遵守や、多言語化への対応などを要請。さらに◇旅行会社や代理業者を通じた申請手続きの簡素化◇発給手続きの迅速化◇数次入国ビザの発給基準の明確化◇ビザ発給業務の効率化に向けた加盟国による協力体制の強化――などについて検討を進める方針を示している。

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一方、欧州委が提案しているシェンゲン協定加盟国(EU22カ国とアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)へのビザなし渡航の対象国は、ドミニカやトリニダード・トバゴなどカリブ海地域の5カ国、パラオ、サモア、トンガなど太平洋地域の10カ国、東ティモールの計16カ国。現時点でシェンゲン協定の加盟条件を満たしていないルーマニア、ブルガリア、キプロスへの入国にもビザ免除が適用される。なお、同協定に参加していない英国とアイルランドは対象外となる。

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