2012/11/12

産業・貿易

「対米FTAが債務危機脱却の鍵」、欧州委員が早期交渉開始を提言

この記事の要約

欧州委員会のデフフト委員(通商担当)は9日、アイルランドの首都ダブリンで開催された欧州自由民主改革党の党大会で演説を行い、米国との間で早期に自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を開始すべきだとの考えを強調し、交渉を進め […]

欧州委員会のデフフト委員(通商担当)は9日、アイルランドの首都ダブリンで開催された欧州自由民主改革党の党大会で演説を行い、米国との間で早期に自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を開始すべきだとの考えを強調し、交渉を進めるための条件についての合意形成を急ぐよう加盟国に働きかける方針を示した。EUは10月の首脳会議で、米国との間で「包括的貿易・投資協定」締結に向けた交渉を2013年に開始するとの目標を掲げ、どのような条件で交渉を進めるかなどについて検討を本格化させることで合意している。デフフト委員は自由貿易の促進が債務危機に伴う景気低迷からの脱却につながると強調し、関税撤廃に加えてサービス、政府調達、規制制度、知的財産権など幅広い分野での包括的な協定の締結を目指す方針を改めて示した。

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EU・米間のFTAが実現すると、世界経済のほぼ半分、世界貿易の約3割を占める巨大な自由貿易圏が創設されることになる。欧州委の試算によると、FTAの締結に伴いEU側だけで年間1,220億ユーロの経済効果が見込め、自動車産業におけるコストも双方でそれぞれ15%削減できるとみられている。

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EUと米国は、自由貿易の促進を通じて経済を活性化させると共に、中国やインドなど新興国の台頭による経済のグローバル化に対応したいとの思惑で一致。昨年11月の首脳会議で、デフフト委員と米通商代表部(USTR)のカーク代表を共同座長とする「雇用と成長に関するハイレベル作業部会」を立ち上げ、欧米間の貿易促進策などについて協議を続けてきた。同グループはFTA交渉の開始を勧告する報告書を年内にまとめる見通しとなっている。

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デフフト委員は「EUと米国は共に投資、成長、雇用を脅かす不確実性に直面している」と指摘し、「包括的な貿易協定が景気低迷から脱却し、健全な成長を回復するための鍵を握る」と強調。オバマ大統領の再選が決まったことで、対米FTAの交渉開始に向けて弾みがつくとの考えを示し、「今こそ行動すべき時だ」と語った。

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EUは昨年、韓国との間でFTAを発効。現在は日本との間でも経済連携協定(EPA)の締結に向けた交渉入りを目指している。

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